(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
本当に大きな困難を向き合うとは如何なることか、それを乗り越えた先にどんな世界があるか。そんなことに触れられる貴重な一冊です。
千日回峰行。
開始は毎日23時(睡眠時間はわずか4時間半)。高低差1,300mの山道を往復48km、それを16時間かけて歩き進む。たった1回でも極めて困難な行程を、毎年春から秋にかけて9年間にもわたり1,000回やり続ける、という筆舌し難い修行(それも失敗したら、その場で切腹がルール)。
この1,300年に達成したのは2人のみ。そのうちの1人が、著者の塩沼亮潤(大阿闍梨)さんとなります。
常人では、想像も、真似も仕切れないような超人的修行に向き合った最中での心情、その末に掴んだ世界。それが、本書の中には描かれていました。
本書の魅力の1つに、修行過程で変化した塩沼亮潤さんの心の様子を感じられることにあります。
上記の引用は、修行序盤から中盤での心情になります。現在は悟りを開かれ、どこまでも肩の力が抜けていて素敵な人柄を持つ塩沼さん。
しかし、元々は常人と同じ悩みを持ち、自らの未熟や不徳さに足掻いた事を語られています。誰しも少なからず持つ、自我や自己愛。それは後に大阿闍梨という生きる仏のような人物でさえ、例外では無かったと。
本書の中には、千日回峰行中の日誌が載せられています。序盤、中盤、終盤それぞれの内容が下のようになります。
高い目標と強い覚悟を持って進み始めた序盤、人体の限界をも超越した困難に苦しんだ中盤。それらの苦しみや悲しみの先に、自我や自己愛を越えた心の平静を獲得した終盤。そんな様子が日誌には残されていました。
(これは…進撃の巨人の名シーンを思い出します)
自分で決めた道と真っ正面から向き合い、粛々と歩き続けること。
合計約4万8千km(その距離は地球一周分にも匹敵)に至る果てしなく過酷な道のり・目標も、「振り返れば1日1日、1歩1歩の積み重ねを、精一杯やる以外のことは無かった」と筆者は述べます。
ああ…この塩沼さんも、果てしなく遠い先と今この一瞬の両方の時間軸を同居させられている人だ。
この2つの時間軸の同時に持つことが、今年の大きなテーマとして模索していた中、これらの3名の方の思考・行動過程に触れられたことは、本当にかけがえの無いものになりました。
最後に最も印象深かったのは、筆者語る「努力」に関してです。
元々この本は、五常・アンド・カンパニーの慎泰俊さんが、ご自身のラジオで紹介していたことから手に取りました(下リンク先の19:26~)。
その慎さんの著書『ランニング思考』(この本も、もう何度見返したか分からない一冊)。
その本の最後に、慎さんと大阿闍梨との対談が載せられています。
また、本書『人生生涯小僧のこころ』のエピローグで、塩沼さんが言ったことがこちら。
もう5年も前になりますが、自分も1度だけ100kmウルトラマラソンを走ったことがあります(エネルギーを使い枯らしたせいか、身体の線が普段の1回り以上も細い…)。
なので、慎さんの言う100kmを越える長距離を走る中で、身体的な極限状態の先に自我が消え、目標への純粋な思いと、周りへの感謝の気持ちに溢れ、辿り着く心の平静。それを今なお鮮明に覚えています。そしてなにより、その感覚が、日常の中で気が付いたら薄らいでしまうことも…
そのもどかしさに対する塩沼さんの回答が、「日々、試行錯誤・挑戦・努力」。千日回峰行という超人的な困難を越えた先でも、それしかないと。
帯に書かれたこの言葉。これを胸に刻んで頑張ろう。
P.S.
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