見出し画像

週末読書メモ122. 『旅のラゴス』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

人生はひとりの旅、
文明は人類の壮大な旅。


日本を代表するSF作家の筒井康隆さん。

筒井さんの代表作の一つが、この『旅のラゴス』となります。

異空間と異時間が入り混じる不思議な世界で、ひたすら旅を続ける主人公の男ラゴス。人生と文明の移りゆく様を描いた爽快な物語となっています。


「もっと南へ、ひとりで旅を続けなければならない」おれは食事が終わってからそう言った。「旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ。それを放棄することはできないんだよ。そして、君をつれて行くこともできない」

ゾムに見送られ、わたしはシュミロッカ背にした。北へ行くごとに少しづつ過去と訣別していくような気がしていたのだが、自らの青春との別離を感じたのははじめてのことであった。

本作の根幹は、タイトルの如く「旅」。

旅を通じて、人や世界との邂逅や訣別。一度でも、旅をしたことのある人であれば、その時の鮮やかで尊い記憶を思い起こすことでしょう。


また、本書の魅力の一つにあるのが、旅の中で出会う人々との関わりです。

「まだ、ひとりで転移したことはないんだよ」おれは答えた。「ひどく難しいそうだからな」
「でも、あなたにならできるわ」
「君にそう言われると、なんだかできそうな気がしてきたよ」

「お互いにこの年齢だから何でも言えるだろうがね、君から愛されていることはわかっていた。わたしはそれだけで幸福だよ」

飄々としてして、シニカルな部分もある主人公のラゴス。

しかし、内なる善性、またそれに触れた人々の関係には、何か大切なものを感じされられます。


その上で、やはり、本書の締め括りも旅に帰結します。

旅立つまでにしておかねばならぬことはいくつかあった。それはむしろ、旅立ちを考えはじめたが故に明確に見えてきた自己の役割や使命であった。また逆を言えばそれ故にこそ私は旅立ち、この都市国家に別れを告げなければならなかったのだろう。

旅をすることによって、人生というもうひとつの旅がはっきり見えはじめ、そこより立ち去る時期が自覚できるようになったのであろうか。

人生の中で、旅をし続けてきたラゴス。旅を通して、人生自体も旅であること、そして、旅の連続であることを悟ります。

ライフネット生命の創業者であり、稀代の読書家である出口治明さんも、人生を豊かにするのは、人と本と旅であると言いました。

『旅のラゴス』を読むと、改めて、そのことを噛み締めます。


『三体』のようなサイエンティフィックなSFとも。

『百年の孤独』のようなハードで重々しいSFとも。

また違う良さがある(ソフトながらも)心に残るSF小説『旅のラゴス』。

自分の一生を、自分の取り巻く世界を、旅し続けられるよう、これからも前へ一歩を進み続けていきたいものです。


【本の抜粋】
「まだ、ひとりで転移したことはないんだよ」おれは答えた。「ひどく難しいそうだからな」
「でも、あなたにならできるわ」
「君にそう言われると、なんだかできそうな気がしてきたよ」

「何か強いものを力にしなきゃいけねえ。そんな時には原始的で、あまり上品でない欲望が力になってくれるんだよ。おれみたいに、教育のない者にとってはな」

「やっぱりあんたは自分のことを知らないんだよ。あんたはね、自分が正直でいい人間だということを知らない間に撒き散らしすみたいにして周囲の者に教えているんだよ。それを感じ取れない人間だっているんだろうけどね。でも、たいていの人間はそれを感じることができるんだよ」

「もっと南へ、ひとりで旅を続けなければならない」おれは食事が終わってからそう言った。「旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ。それを放棄することはできないんだよ。そして、君をつれて行くこともできない」

ゾムに見送られ、わたしはシュミロッカ背にした。北へ行くごとに少しづつ過去と訣別していくような気がしていたのだが、自らの青春との別離を感じたのははじめてのことであった。

「お互いにこの年齢だから何でも言えるだろうがね、君から愛されていることはわかっていた。わたしはそれだけで幸福だよ」

旅立つまでにしておかねばならぬことはいくつかあった。それはむしろ、旅立ちを考えはじめたが故に明確に見えてきた自己の役割や使命であった。また逆を言えばそれ故にこそ私は旅立ち、この都市国家に別れを告げなければならなかったのだろう。

旅をすることによって、人生というもうひとつの旅がはっきり見えはじめ、そこより立ち去る時期が自覚できるようになったのであろうか。

P.S.
農業インターン・副業・プロボノ大募集!

学年や年齢、農業経験の有無は問いません!
インターン・副業・プロボノに興味のある方は、ぜひご応募ください!
農業界の未来を、共に切り拓いていきませんか?
【①インターン】

【②副業・プロボノ】
※個別対応のため、TwitterのDMでお問合せください(下はイメージ)。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集