(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
「継ぐ」とは。
衝撃の巨大自動車企業小説の第3部作であり、完結編。
『トヨトミの野望』、『トヨトミの逆襲』に続く最新作が、本書の『トヨトミの世襲』。
どこまでが真実で、どこまでが創作なのか物議を醸す本シリーズ。
過去2部作以上に、生々しくシビアなテーマを扱う本作は、企業経営/継承に関わる人、物語小説好きともに読み応えのある内容となっています。
継ぎたい者、継がせたくない者、継がされる者、取り入る者、翻弄される者、抗う者。事業継承を軸に、様々な立場の人間が織りなす物語が詰められています。
外から評価・非難することは簡単ではありますが、当事者の身になれば、そんな生優しいものでは決してありません。誰が正解、何が正解とは言い難く、人は置かれた立場ごとにそれぞれの正義があることも、まざまざと感じさられます。
子が親を殺した時、世襲によって飛躍するケースがあると。
これは、一理あります。歴史を鑑みれば、日本では武田信玄、海外ではアレクサンドロス大王等々、確かにその事例はいくつも思い浮かびます。
しかし同時に思い返すのは、飛躍する一方で、次代が続かないケースも枚挙に遑がないこと(もちろん、歴史上に名を残すほどの偉業/偉人が2人続くことなど求めるべきではないのかもしれないが)。
長く続いたローマ帝国やヴェネツィア共和国。飛躍と存続の両立には、(まだ自分の中でも理論化できていないけれど)「子が親を殺す(超える)」の他にも、何かが必要なのだろうなあ。
そのヒントは、本作終盤に出るこの言葉。きっと、筆者が最も言いたかったメッセージはこれである。
「創業の精神とそこで働く人々の情熱を、時代に合わせてつなぎ合わせることだ」
事業継承の方法云々は、組織の数だけあるわけで。どんな方法だろうど、その精神と情熱を、時代に合わせて繋ぎ合わせられるかどうか。
過去2作以上に、本当に真実だろうか(笑)と思える描写も多い第3作ではあるけれど、どんな組織だろうと直面する課題を客観的に捉えることもできる1冊。
当事者ですら扱いづらい問題ではあるが、後回しにすればするほどロクなこともなく。自分自身も継ぐ立場として、(将来は)次代へ継がせる立場として、目を背けずに立ち向き合っていきたい。
P.S.
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