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「孤独と向き合う」(元姑の気持ちを受け継いで)

「会いたい」
ひっ迫した元姑の声で
新幹線に揺られて広島から名古屋に向かった。

元夫は、死んでいる。
私たちの間に子供はいない。
私は新しい結婚もした。

10年以上会っていないお義母さん。
癌になったから元気なうちに
「もう一度会いたい」

電話の向こうで声が震えていた。

77歳の一人暮らし。
連絡の取れる身内はいない。
彼氏(茶飲み友達)は…いる。

今では他人同様の私が
「最後の身内」だと頼ってくれた。

事情を話すと現夫も快く了承してくれ
お義母さんに会いに行くことにしたのだ。


お義母さんのマンションへ着くと
今か今かと待ち構えていた目じりが
こぼれ落ちそうな表情で出迎えてくれた。
初対面の彼氏もいる。

二人はお義母さんの体について
話してくれ…
今は元気そうに見えるが
いつ死んでもおかしくない状態だと。

一人暮らしの孤独感は
体の状態も含めて恐怖心を募らせている。

なんだか、申し訳ない気分だ。
もっと交流を持っていれば
良かった。


積もる話は、また明日…。
迷惑になったらいけないからと
その日はホテルに帰った。

次の日は
ドライブに行こうと誘ってくれ
三人で出かけた。

美浜町の野間埼灯台へ。

海岸沿いを走りながら
彼氏と競争するように私に話しかけてくる。
久しぶりに会った「娘」を
取り合うように。

まるで親子三人の時間だ。
血の繋がりなんて…関係ないな。


家に帰ると、おもむろにネックレスを
見せてくれた。
お義母さんの思い出が詰まっている。

「貰ってほしい」

アクセサリーは使ってこそ輝く。
もう自分が身に付けることはない。

貰ってくれないとゴミとして
捨てると言うんだもん。

迷ったが、頂くことにした。
もうすぐ形見になるだろう。
ありがたく思い出の品を引き継ぐのも
お義母さんへの愛情だ。


翌日…
「病院へ行くからついてきてほしい」
頼まれて一日滞在を伸ばした。

…Dr.の話を緊張しながら一緒に聞く。

あれ? ん? え? ( ゚Д゚)!
癌じゃなかった。

お義母さんの思い込み。
どれだけ説明しても納得しないお義母さんに
困っている…とDr.は私に言うではないか。

笑った。
ズッコケた緊張と…嘘じゃない安堵感。

私から説明しても納得しないお義母さん。
自分はもうじき死ぬと言い張る(笑)

そっか…お義母さん…心細かったんだね。

歳を重ねるにつれ
体の不調や孤独も重ねて辛かったんだ。
注目すべきは…その「心」だ。

これからは、もう少し連絡するね。

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