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散文

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エッセイや日記のような日常の記録をまとめています。
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#随筆

萌芽

あの疼きが忘れられない。もう何十年も前の話だ。 小学2年のある夏の日、S君は学校を休んだ。…

イトケン
4年前
50

スタバにガリレオ・ガリレイを連れて行きたい

コーヒーは天動説だ。 コーヒーが美味しいなんてウソだ。僕はそんなの信じない。 よくよく味…

イトケン
4年前
28

私は機械になりたい

「アレクサ、今何時?」 僕の一日はその言葉から始まる。 睡眠アプリでノンレム睡眠のときに…

イトケン
4年前
17

神社で手を合わせるとき私たちは何に祈っているのだろうか

日本人は世界で最も「時に神を信じ、時に神を信じない」気まぐれな民族らしい。私自身よくよく…

イトケン
4年前
13

中二病はやめられない

残業なんかするもんか。17時30分。時間ぴったりに退勤だ。 オフィスからエレベーターを降りて…

イトケン
4年前
14

ベランダ

春風が死の影をさらって行った。 連休だが緊急事態宣言で実家に帰省もできない。せっかく晴れ…

イトケン
4年前
20

精神浸食

春になると自殺する人間が多いという。 どうやら気候の変動が人間の精神状態に深い影響を及ぼすらしい。 ずっと家に閉じこもっていて、さすがに出不精の僕でもこれは精神的に良くないな、と思った。そこで外出することにした。だが、どこへ行けばよいのか迷った。こんな時いつもなら街なかを散策するのだが、緊急事態宣言で街に出歩くべきではないだろうし、そもそも駅周辺や繁華街は静まり返っていることだろう。 こうした状況のなか、公園は健康維持に良いと推奨されていたこともあって、僕は近場の森林公園

囚人

深夜、仕事帰りの電車を降りて俺は家へ向かっていた。時刻は午前0時を潜ろうとしていた。灯り…

イトケン
4年前
10

消えた少年

背筋が思わずゾクっとした。指に何が止まったのだ。明らかに生き物の感触だと本能が察した。瞬…

イトケン
4年前
14

霧中漂流

霧に街が溶けていく。 夜霧の街はいっそう静寂に沈んでいく。 僕はマンションのバルコニーか…

イトケン
4年前
14

夜陰の鬼雨(やいんのきう)

死体のように沈む夜、唐突に晩夏の慟哭がとどろいた。 号令もなく一斉に放たれた無数の槍が砕…

イトケン
4年前
16

津波にのまれた青年のことを、なぜ今になって思い出すのか

申し訳ないと言ったな、君は。罪深いのは俺の方だ。 消息不明になった君を、俺は少しでも探そ…

イトケン
4年前
6

狂い風

その夜、闇が紅く染まった。 深夜、風が咆哮している。行き場のない怒りが渦巻いているようだ…

イトケン
4年前
12

世界で一番奇妙なスポーツ

マグロを投げて飛距離を競う「マグロ投げ」。そんなスポーツがある。 オーストリアのスポーツで、基本的にハンマー投げと同じだ。ただ投げるものがハンマーではなくマグロなのである。マグロのエラ部分に縄を付けてグルングルン回して、思いっきりぶん投げる。ハンマー投げの選手のように投げたあと謎の雄叫びをあげるかどうかは知らない。ただしマグロの幽霊は絶叫していることだろう。もし日本で行われたなら、日本中の寿司好きが絶叫するに違いない。 本当に世界には色んなスポーツがある。 コンピュータ