【長編連載小説】絶望のキッズ携帯 第21話 ゲーム
ゲーム。確かにガキの頃は夢中になった。任天堂、スクエニ。素晴らしいゲームを作っていた。どこか道徳的だったり、今思えばプレイ時間がほどほどでクリアできるようになっていた。次を売りたかったという考え方もあるが、何より子供をのめり込ませたく無かったんじゃないかと思う。ある意味卒業しない方が良かったんじゃないだろうか。女漁りにのめり込んでからは道徳なんてなくなったし、全部で何時間かけて女たちを口説いてきたのか思うと絶望する。しかし得られるものもある。大切にするべき女を選ぶ基準ができた。浮気しても虚しいだけだろうと予想が付くし、そもそも女に期待しなくなる。俺は社会に出るまで倫理的にクズで、社会に出てからは社会的クズになったが、夫としては悪くないと思いたい。他の女に興味がない。
オンラインゲームは女漁りに近いだろう。プレイ時間は重ねるほどにレベルやスキルが上がっていき、バトル系のものなら暴力的な感情も生まれるだろう。そして得られるものは何か。俺がこのガキと話している限りでは何もなさそうに思える。PCを駆使していると豪語している割には検索する能力は低く、ゲーミングPCが欲しいと言っている割にハードに関する知識も浅い。欲しいと言っているPCのスペックとフォートナイトの推奨環境を比較すると、明らかにオーバースペックのものを求めている。そんなにオンラインゲームというのは面白いのだろうか。
その疑問が生まれたと同時に俺は気付いた。こいつは有料のゲームをやっていない。無料のものしか与えられていないから比較対象がないんだろう。
「お前、何のゲーム持ってる?」
Switchのマリオカートと太鼓の達人、桃鉄と答えられた。家族でやるゲームばかりだ。これはやり込み系じゃないし、ハマるゲームじゃない。
「有料のゲームやれよ」
この時代、無料でできることは多い。無料アプリにフリーソフトと充実しているし、情報はインターネット上に溢れている。だから、有料のものにはそれだけの価値を持たせてある。考えて欲しい。あの任天堂やスクエニのような大企業が構想に何年もかけてソフトを作るのだ。製作費も途轍もない金額だろう。そんなゲームが、どこの誰が作ったのかも分からないようなゲームに劣るとは思えない。劣っているなら任天堂なんて潰れている。ガキは不承不承うなずいたが、俺はゲームに関しては突破口を見つけた気がした。ゲームのスキルより合コンのスキルの方が重要だし、早くその中途半端な髪の毛をツーブロックにしてレベルを上げてやりたい。女漁りがない人生なんて失敗する。嫁に風俗の名刺が見つかった時、会社の上司に無理矢理連れて行かれてさーと言って誤魔化す男になる。嫁を大事にできるようにもなるから、とりあえずサイドを刈ろう。