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投資と顧客体験 ~野村證券のリテールトランスフォーメーションの謎~



野村さんの対面証券口座を約20年間維持してきた。

ところが野村さんの春の組織変更により、デジタルカスタマー(おそらく資産1億以下?)と呼ばれる顧客ランクへ格下げ(?)された。

さしあたって、直近で困ることもないが、デジタルカスタマーは、対面口座にもかかわらず、支店訪問を禁止される。

そうであるなら、野村ネット&コール口座(非対面口座)に強制的に移管された方がまだましだ。

とはいえ、格下げは理解できる。
今の私は、ほとんど野村さんの利益に貢献していないからだ。

かといって支店に来るなとは(正確には来るなとは言われていない。デジタル対応すると唐突に電話で説明を受けた)、謎すぎる。

郵送されてきたA4 1枚のビラには、

ご面談方法が変わります。
従来:店頭・訪問 
⇒今後:オンラインでどこでも

と書かれていた。

店頭と自宅訪問が禁止されたが、中身は従来と変わらない。オンライン面談なんて、金融業界が遅れていただけで、何の新しさもない。

20年間の取引を、まったく中身のない1枚の紙で切るとは、凄いと感心する。


今回の野村さんの施策は、

表向きには、リテール部門を変革(RX:リテールトランスフォーメーション)しながら、データとデジタル技術を活用した「商品やサービスの利用における顧客視点での体験」の改革、すなわちデジタルカスタマーエクスペリエンス(DCX)向上を目指すものと理解した。


23年度の4~6月期の業績報告では、

『市場環境の好転に加え、人員配置変更などの体制整備の効果もあり国内リテールを担う営業部門が伸長した』と評価しているものの、真偽は非常に怪しい。


長年の野村ユーザーでありながら、支店訪問を禁止されたくやしさと、優秀な野村さんの担当者を外された哀しみを乗り越えて、

野村さんのDCXも参考にしつつ、受け身ではなく自分自身で、どのように顧客体験を向上できるのかを考察することにした。


野村證券という会社


野村さんのDCXを考察する前に、野村さんへの想いを書いておきたい。

私は、現在でも野村さんは普通に好きだ。奥田CEOのクールなプレゼンも好みだ。
泥臭い大和さんとは対照的だ。

そもそも私が野村さんの口座を開設したのは、約20年前、仕事で投資信託のオンライン売買システム開発プロジェクトに入った時に、個人的に5~6社ほどの証券会社を調べて、野村さんが一番洗練されていると感じたからだ。

あくまで個人的な好みでの評価だけれども、その感覚は今も変わらない。オンラインシステムも、ぐちゃぐちゃな楽天証券やマネックス証券等のUIより好みだ。

現時点では、機能面で様々な点でネット証券に劣り、取引手数料の高さから、売買していないけれど、もし数億円の資産がある富裕層になれば、利用したいとは考えている。

そんな野村さんと距離をおくきっかけになったのは、徒歩圏の支店が廃止されたこともあるが、以下の記事が直接的なきっかけだ。


前CEOの2019年の記事、計5ページの中の3ページ目の告白に驚愕した。
要約すると以下になる。

準富裕層以下は、まったく力を入れてこなかった。なぜなら、当社のリテール部門が興味を持たなかった。この分野で稼げるとは思っていないから。

おっしゃる通り。まったく力を入れられてこなかった。

それにしても、CEOが、正面からこんなことを言うとは!

時期的に赤字を出して混乱していたのかもしれない。そうであるなら、富裕層以外は口座を開設させなければよいのに。

よくも、こんなことを言うなあと、ある意味、すごいなあと感心したのが距離を置くきっかけだ。

この昭和的発想(?)の元CEOの発言は、過去の成功体験の呪縛に囚われていると感じる。ただ、この発言は氷山の一角であり、社内の世代間での給与格差などを背景に、実際はもっと複雑な状況だと推測する。

こんな記述もある。

ご存知のように、当社は給料水準が高い。福利厚生も充実している。なぜかといえば、他人よりも働いたからだ。みんなが必死になって働いたからだ。裏返して言えば、赤字が続けば、良好な給料水準をエンジョイできなくなる。それが資本市場の論理でもある。当社はその論理で動いている以上、そうなるしかない。


正直、こんなことを言う金融業界が、まったく理解できない。

野村さんから個人的に提案されたのは、仕組債のような商品ぐらいだ。ほとんど提案のない中で高い手数料で、株式取引していた。さらに仕事中の平日に電話するなといっても無視して電話してくる。クレームしても何回か電話があった。

それを、金融業界では他人より必死で働いたというらしい。

この記事をきっかけに、富裕層ではない私は、特定口座内の保有株式を他社へ全移管し、保有ファンドを全売却した。残りは、NISA口座内のごくわずかな国内株式と、国内債券のみだ。

その後、

CEOが変わり、野村さんの5イエスに感銘を受けつつ、担当者の優秀さにも改めて感心し今に至っている。

けなげな長年の野村ファンに対して、支店への入館を拒絶するとは、なんと冷徹で残酷な!

と、ちょっと大げさに書いてはみてたが、じゃあ、自分はどうしたいか?を考える必要がありそうだ。


野村證券RX後の顧客体験テスト


もう組織変更から、3ケ月ぐらい経過したので、どれだけリテールトランスフォーメーションしたか、まず確かめようと考えた。

天下の野村さんが、一方的にデジタル化した顧客対応が、どれだけ進化し、どんな新しい顧客体験ができるか楽しみだ。

実際にコンタクトする前に、23年5月のインベスターデイの資料から前提知識を深めようと考えた。


まず体制的には、

非富裕層向けに1,800名のパ―トナー(リテール営業)を配置していたが、200名に減らし、1,600名を富裕層担当に異動させ、富裕層重視に変更している。なかなか大胆だ。

https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/presentation/#presentation08より引用

非富裕層顧客へは、従来の1/10程度のマンパワーになるので、個々の顧客に寄り添うことは不可能で、イベントドリブンの、単なる作業者集団になるのは明らかだ。

メインタイトルでわかるように、顧客視点はなく、非富裕層顧客への対応に手を抜くことで、収益向上することが狙いだ。投資家向けの資料だとしても、単なる野村さんの自社都合で層分けしているとしか見えない。

そして中期戦略としてのRXが、以下だ。

https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/presentation/#presentation08より引用

RXのような流行語で書かれた資料は、すべてあやしい。

大型コンピューターの世界でも、ほぼ同じ改革が1990年代に実施されたので意図や方法論はよくわかる。

大型コンピューターの世界では、その後、業界全体が衰退した。

もし同じ流れになるなら、顧客離散でマス層の顧客基盤を失いつつ、富裕層でも競争が激化し、競争の中で業界全体が衰退していくシナリオになる。

生物学者の吉村仁さんが書かれた、『強い者は生き残れない―環境から考える新しい進化論―』の例を出すまでもなく、

自社都合だけで進めれば、そこには同じような自社都合のプレイヤーたちが参入し、利己的な者たちの消耗戦の中でつぶし合うだけにならないだろうか?

それにしても、なんだか違和感がある。

現在、富裕層対応の人数が足りないことだけを課題視しているように見える。

一番の強みは、百戦錬磨の野村のパ―トナーのはず。その人材をどう変革させるかは何も書かれていない。社員の品質には、100%自信を持っていて、単に頭数だけ揃えたら、富裕層エリアで、楽勝できると分析しているのだろうか??


野村さんのRXの狙いは、以下の2点ようだ。

◆幅広いお客様とのタッチポイントを持ちつつ、 少ない人員数でも、デジタルを活用した効率的な体制下において、高い生産性を実現
◆オンラインサービスやアプリの拡充等、デジタル の活用を通じて、お客様に利便性が高い形で プロダクト・ソリューションを提供

これらの狙いがどのように実現され、

・タッチポイントがどのように変わったか?
・顧客体験がどのように変わったか?

を確認するために、格下げされてから、はじめてコンタクトすることにした。

デジタルカスタマーのリモート面談申し込み方法は、

件名「お役立ち情報を毎月お届け!野村だより」のメールに記載があった。このメール、不思議なことに毎月お届けといいながら、3ケ月に1回ぐらいしか送付されない。

また、メール内に、顧客氏名と担当者名がメールに書かれているが、カストマイズされた内容ではなく、ただの一般的なトピックスの一斉配信に見える。天下の野村さんが、これでRXというのだから、あきれる。

せめて、顧客属性から、10パターン以上にカストマイズして送付して欲しい。

更に、メールに記載された担当者名が、組織変更の時に紹介された担当者と氏名がいつの間にか変わっていた。担当変更の連絡は受けていない。おそらく何の引継ぎもされていないだろう。

だから面談予約しないで、直接電話をした。

この担当変更の件は、電話の中では、何も会話はなく、後日、組織変更時に紹介されていた担当者が退社し、交替になったことの連絡の郵便が届いた。1,800名が、200名になったので、細かくフォローできるはずがない。担当者もマイカスタマー感が薄く、タダの事務処理屋感がにじみ出ていた。

支店訪問を禁止しておきながら、コンタクト先にフリーダイヤルはない。でも私は、電話用に楽天モバイル回線を契約しているので、問題ない。

テスト項目は3点。

・NISA口座内の株式移管の相談
・保有国内債券の中途売却相談
・海外の証券口座からの株式の移管可否

まあテストとしては無難な項目だろう。

直接電話した感触では、デジタルカスタマーには、いちおう担当者がアサインされているものの、単なるネーミングだけのようで、単なる売買だけなら、電話を受けた人に依頼しても良いようだ。

私は、電話又は対面で株式売買をした経験が、少ない。だから対面で相談しながら株式売買をする利点を理解できていない。でも初対面の人に、電話で相談し、しかも高い手数料で売買する気にはなれない。

担当者と話さないとテストにならないので、新しい担当者からのコールバック待ちとなった。電話はこれだから困る。外出しにくくなる。

1点目:国内株式の移管手続
株式の移管手続がオンライン化されていれば、電話する必要がない。野村證券は移管申請書類の送付依頼するだけでも、電話する必要がある。まったくデジタル感がない。
前担当者であれば、どの株式を移管したいかを聞かれた。今回は、何も聞かれない。これでは電話で会話する意味が何もない。

会話の中身は、単なる処理だけの話で、顧客側への配慮は何もない。

この状態では、顧客側も受け身ではなく、移管する株式に関してのタイミングなどに意見が欲しければ、すべて自ら話さないとダメで、話の相手を、AIだと思えば、丁度いいと感じた。

で、NISA口座内の株式移管書類は、2日で届いた。デジタルカスタマーでなかった頃なら、申請用紙に鉛筆で記入個所などマークしてくれていたが、単なる用紙の同封だけ。申請には、いまだに届出印を捺印させる。DX化への熱意は、まったくないようだ。

おそらく、書類送付はプロセス化されており、要望を受けた担当者が、バックオフィスに投げて、別の作業者が用紙を詰めて処理する。ルーチン作業だから、早い。でも郵送なので遅い。たしかLINE証券は、すべてオンライン化していたと思う。LINE証券のシステムを移管して欲しい。

ネット証券では、webで手続きが完了し、株式移管手数料は通常無料だ。野村さんは、顧客にフリーダイヤルでない電話で申請書要求させたあげく、1銘柄最低1000円程度の移管手数料を徴収する。この流れのどこにRXがあるのか、ほんとうにお聞きしたい。そもそも、アドバイス不要の安価で、良心的な株式手数料体系があれば、移管する必要もない。ないないだらけだ。


担当者に、「この組織変更の顧客側のメリットが分からない。野村さん都合のコスト削減施策にしか思えない」

と、隠れ野村ファンなので、意地悪な質問をしてまった。明確な回答はなかった。

相続対策などの込み入った相談でも、ズームでの面談になるかを質問したら、ケースバイケースで対応するということだった。3年ほど前に、相続税の試算を野村さんに相談したところ、大阪の税理士を紹介された。愛知の野村さんの支店なのに!大和さんには、相続対策のソリューションキットがあるが、野村さんは今でも税理士の紹介レベルのようだった。この対応は不思議だ。厳密に税にかかわる業務を、分離する方針なのだろうか?

相続を税理士とのコワークの状態にしたままで、ゴールベース資産管理を実現できるかは疑問だ。

対面にこだわりのない顧客はどうだろうか?ファンド積立が主体であれば、大手証券会社の有効性はあるかもしれない。各種ポイント優遇は、ネット証券には劣るものの、大手の安心感はある。ただ私の場合は、zoomや電話での会話しかしない相手には、深い相談は、なにもしないだろう。

大手のネームバリューを利用し、現役世代はNISA口座での積立てで接点を持つつ、相続や退職で、1億以上の金融資産になった時点で、対面顧客に格上げする作戦かもしれない。

ついでに、メールのやり取りをテストに加えた。

大手証券は、メールには細心の注意を払っている。送信前に上司の承認が必要という話も聞いたことがある。これは充分理解できる。同姓同名などのメールの誤送信は、即セキュリティ事故になる。素人に近いデジタル庁とはレベルが違う。

取り寄せたNISAから特定口座への移管依頼書に、銘柄の勘定年分を記載する欄があり、記入例は、以下になっていた。

一番古いお買付け年~一番新しいお買付け年

買付けたのは、5年以上前で、ロールオーバーされている。買付けた年をオンラインで検索したが、見つけられなかった。

一方、NISAお預り資産の表示の中に『預り年』という項目があった。

マネックス証券のシステムでは、野村さんの預り年と同じ欄に勘定年と表示されていたので、

勘定年≒預り年 なのだろう。

もし、NISAでの同一銘柄の預り年が、

2020、2021、2022

の3つに分散していて、2021分は残したい場合は、2行で書くのだろうか?

書き方の質問メールを送付したが、2日たっても返答がないので、電話で確認した。

おそらく個人宛のメールなど確認できる状況ではないのだろう。RXというなら、これぐらいの質問は、有人チャットで対応して欲しい。

そもそも、読んでわからない資料を、天下の野村さんが郵送しないで欲しい。

この1点目の顧客体験テストの評価は、10点。電話する意味がない。単なる時間の無駄だ。デジタル度は0点だ。

2点目:国内債券の中途売却
国内債券の中途売却もオンライン化されていないので、電話する必要がある。オンライン画面で表示されている評価損益金額以外に手数料などが、かからないかを確認したかった。オンライン化されていれば、確認画面とそのヘルプ情報で料金を確認できるだろう。
結果、手数料はかからないが、オンライン画面で表示されるのは、前日のデータで、最新の評価損益は毎日変動し、都度、電話で確認する必要があるとのこと。これもまったくデジタル感がない。

この顧客体験テストの評価は、30点。まったく使えないシステムだが、さすが野村さんの担当者の説明はわかりやすく、信頼できそうな感触は得られたので、少し加算した。

結局、数日後売却したのだが、本人特定で不安を感じた。
登録電話番号でないスマフォからかけているにも関わらず、担当者ではないコールセンターの担当者が、生年月日だけの本人特定で売却可能だった。天下の野村さんなので裏で声紋認証していると信じたい。


3点目:海外の証券口座からの株式の移管可否
これは、後日、電話で別の担当者から回答していただけた。メール等で回答して欲しいといっても、不可だった。少し複雑な内容は、上位の担当者が対応するようだ。移管可能対象銘柄なので、移管できるとのこと。ただ移管先は一般口座に入るようだ。数日後に申請書類が届いた。

電話での応対はめんどうだ。人の特性を配慮の上、デジタルで回答して欲しい。私はデジタルカスタマーなのだから。

今どき、アポなしで直接電話をかけてくるのは、知人を除けば、あやしい業者と、証券会社ぐらいだ。

この外国口座からの株式移管は、大和さんとSMBC日興さんにも、確認していた。手続きとしては、一番野村さんがわかりやすかった。SMBC日興さんは移管株数に下限があり、私の状況では移管不可だった。大和さんは可能だが、本人確認にパスポートのコピーを求められたので、敬遠していた。ネット証券は、調査した中では、どこも対応していなかった。

この顧客体験テストの評価は、80点。やはりネット証券では限界があるので、大手証券の口座も最低1つは必要だと再認識できた。

3つのテストの平均点は、40点。

微妙な結果となった。

感触として、今回のテスト項目には重点をおいていないということだろう。野村さんは、どんな企業になろうとしているのか???

デジタルカスタマーとしてのファーストコンタクトを終えて、野村さんに対しては、顧客をデジタル化する前に、デジタルリテールになってからにして欲しい!と思った。

デジタルカスタマーではなく、テレフォンカスタマーであり、時代を逆行している。

野村さんのRXは、顧客側にメリットがなく、
野村社員も単なる作業者になるのでメリットがなく、長く続かないと予感する。

デジタル化が進めば、前処理はすべてAIに処理させ、バックオフィスは再雇用の高齢社員か、子会社に出向させたデジタルカスタマー対応要員が処理するような、そんな感じだろう。

このRXの推進が原因なのか不明だが、こんな記事もある。

野村のリテールは崩壊寸前で、SBIへの転職希望者が後を絶たないと書かれている。


記事の真偽や、営業部門の組織変更との関連はわからないが、デジタルカスタマー側に配属された営業は、単なるワーカーなので、モチベーションが大幅に下がるのは容易に想像できる。デジタル化されていない手続の単なる作業支援だけでは、顧客から感謝もされない。

奥田CEOも、クレバーでスマートな方なので、ドロドロ人情派昭和営業部員には人気が出ないことも、容易に想像できる。


また、最近のこんな記事もある。

IFAへの誘導も感じるが、内容は、あ~ぁというため息しか出ない。

「顧客が主語となるような会話はまったくなかった」
「証券会社が顧客を選び、顧客に何を買わせるか」
「顧客をどう誘導し投資させるのか」

全社ではなく、ごく一部の組織なのかもしれないが、

コーポレート・スローガン:
目指すのは、"今"以上の"未来"』は、

この内部告発を真とすると、今以上の野村グループの未来なのだろう。野村さんのRXは、このコーポレート・スローガンに合致する。

野村グループの野村徳七の創業の精神『自己の利益よりも顧客の利益を先にす』が消えたなら、社名を変えて欲しい。

テストを通じて、ひとことで感想をまとめると、

期待感ゼロだ

そもそも人間をデジタルカスタマーと呼ぶなんて非礼すぎる。と昭和人は思う。

ちょっと響きだけカッコいいけれども。。。


デジタルファイナンシャルアドバイザー


野村さんのRXを評価するには、コンセプトとして「デジタルファイナンシャルアドバイザー」と命名している4つのアプリの検証も必要だろう。

(1)FINTOS!
(2)OneStock
(3)NOMURA
(4)Follow UP

詳しい評価内容は省略するが、Follow UP以外は、試用後、私には不要と判断し削除した。

Follow UPには、可能性を感じた。

リテール営業がフォローするような情報をアプリに代替させる試みだ。1週間使用し、フォローされたのは、単なる保有株のアラート類だけだったが、これに人の知見とAIを組み合わせると、新しい体験ができる予感がした。

ただ、現時点のアプリ群では、「デジタルファイナンシャルアドバイザー」からは、ほど遠いと思う。


デジタルカスタマーエクスペリエンス向上


野村さんのデジタルカスタマーとしての顧客体験は、デジタル感ゼロというより、デジタル感マイナス50ぐらいだった。

野村さんがダメなら、自らトランスフォーメーションすればよいと考え、自分はどんな顧客体験をしたいかを考えるために、様々な情報に触れた。

Kindle Unlimitedでも、DX、CXやSX(ソーシャルトランスフォーメーション)など、やたらXのつく本を何冊か読んだ。

でもなかなか難しい。自分としてのありたい姿を思い描けない。

そんな中で、富士通さんのサイトが方向性のヒントをくれた。


RXが、クライアントのエクスペリエンスを起点としたビジネス変革であるならば、

投資家視点のRXは、

エクスペリエンスを起点とした投資体験変革だ

ポイントは、富士通さんの知見を応用すれば、4つある。

・タッチポイントを、従来の狭い範囲に固執せず、行政、地域などとも広範囲に持ち、多様な「人」と連携できるように、自らデザインする。

・リテール企業との投資プロセスを分解し、できるだけ自動化、機械化することでリテール企業と顧客双方にとっての価値を自ら最大化させる。

・信頼できるリテール企業へは、個人情報を自ら意図的に与えることで、カストマイズされた価値を享受する。

・最終消費者である顧客としての社会課題解決への役割を自ら担う。


多様な人と、タッチポイントを持ちつつ、プロセスは極力自動化する。信頼できる組織には、自らをオープンすることで、関係性の最適化を図る。

方向性は、機能的な価値と、体験を通じて得られるワクワク感といった感情的な価値の両立。

投資体験変革の詳細は、別途深堀していきたい。


まとめ


野村さんの今回の施策は、

利益がなく手間だけかかる顧客を切りたいだけにしか思えない。マスクをした人の顔を記憶しにくいように、浅いタッチでは、サービス自体に愛着をもてない。人情的な感情が希薄になり、必然的に疎遠になる。野村さんにとって不要な顧客の自然減、これが真の戦略なのだろう。実験としては面白いと思う。

準富裕層以下を切り捨て、富裕層に注力したとして、富裕層は富裕層を長期的にキープできるのだろうか?相続時に、税金でガッポリ抜かれて、徐々に衰退していかないのだろうか?

また、今現在の富裕層にフリーの富裕層はいるのだろうか?既にどこかとコネクションのある富裕層を他社から奪うのだろうか?

こんな富裕層ビジネスに偏った会社に就職したいという若者はいるのだろうか?また後継となる強いリテール営業を育成するのは難しいだろう。

窓口で証券口座を開きたいと訪問した顧客にも、あなたはデジタルカスタマーですと認定し、もう来店しないでくださいというのだろうか??
まだまだ謎が多い。

個人的で昭和感覚だが、対面で得た信頼関係があるから、電話やZOOMで安心して取引できる。対面しないのなら、対面口座の意味はないと思う。

デジタルカスタマー側のポイントは、

時代を少し先取りして、野村さんの担当者を人間ではないと考え、AIに作業依頼するように、自分の要望の詳細を正確に伝達すること。

だろう。

ところで、

今回の変更で、野村さんの富裕層のビジネスは変わるのだろうか?
人が増えたくらいで、何かが変わるとは想像できない。

取りこぼしていた富裕層の顧客は、拾えるかもしれない。ただ富裕層の課題は幅広いので工数だけ掛かって、儲からないケースも増えるだろう。

そうなるとまた、富裕層を儲かる層と、そうでない顧客に層別し、きりがなくなる。野村さんの高給の高齢社員が退社し、コスト構造が改善するまで、このモデルが持ちこたえられるだろうか?

個人的には、視点が根本的におかしいと思う。

野村のリテール営業が、ほんとうにすばらしいパートナーとして、顧客の前に立てるかどうかが、唯一無二の論点だと思う。それが野村さんの中期戦略から見えない。

パートナーが素晴らしければ、人数が少なくても、列に並び待つと思う。

野村さんのアプローチが残念でならない。富裕層に注力することは野村さんの自由。でも、野村さんなら顧客の資産を育て、守り、継承していた事例、ノウハウは無限大にあるばずだ。その成果を社会へストレートに還元して欲しい。

狭い画面越しにしかリテール営業と会えないデジタルカスタマーの顧客体験は、プアーだと思う。

野村さんのRXは、
顧客視点が無理なら、せめてリテール営業を中心とした『人』視点で、もう一度、精査して頂きたいと切に思う。もしこの中期戦略を、リテール部門が主体で策定したものであるなら、従来とは異なる会社に再構築するということなのだろう。

結論として、

当面ゴーストカスタマーになるので、私自身は何も困らない。
遠くから、このリテールの中期戦略を見守りたい。

私もアナログカスタマーに戻れる日が来るだろうか?
少しだけ楽しみだ。

【今日のひとこと】


金融は究極のサービス業だと考えている。金融は売るものが見えない。だから価値は働く人しかいないからだ。

(マネックスグループCEO 清明祐子:2023年7月30日、日経新聞の記事より)

記事には、

縁を大切に
とにかく前へ!!

と自筆のサインがある。

なるほど。
とにかく前に進もう!



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逢坂リュウ
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