感想:『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』岩竹美加子
理想の学校教育ってなんだろうなあと思っていた時に出会った一冊。なんとなく教育で有名なフィンランドという認識だったのですが、読んでびっくり。教育に対する強い理念から、現在のフィンランド教育が成っているようでした。
概要
本書は以下の8章から成っています。
・フィンランドで親をやるのは楽だった
・フィンランド式「人生観」の授業と道徳
・フィンランドはいじめの予防を目指す
・フィンランドの性教育
・フィンランドはこうして「考える力」を育てている
・フィンランドの「愛国」と兵役
・フィンランドの親は学校とどう関わるのか
・フィンランドの母はなぜ叙勲されるのか
著者は東京生まれで日本の四年生大学卒業後、フィンランドのヘルシンキへ行き、教授をしている方。本書では、研究者視点と親視点から、日本とフィンランドの教育の違いを語っています。
フィンランド教育の根幹となる部分は二つ。一つは「教育の無償と平等」である。いかなる理由によっても差別されず、一人一人に等しい出発点を保証すること。これが本書でも強調されている。
もう一つは「子どもの様々な権利が保証されること」である。これは憲法に則った考えでもある。フィンランドでは子どもの権利が様々規程されている。この権利については学校教育で子どもへ伝えられ、子ども自身で自分や他者の権利を守ることを考えていく。
このようなベースのもと、フィンランド教育では「子ども一人ひとりが自分を発展させ、自分らしく成長していくこと」を目指している。それは自分自身の考えを持ち、アクティブで良識ある市民として成長することである。
上記のような考えに基づくフィンランド教育は、国家と人が相似形である。国家が独立し、自由で自立、自己決定権を持ち、不可侵であるように、人も独立し、自由で自立、自己決定権を持ち、不可侵である。一方、日本は国家の下に人がある。国家と称していても、それを構成するのは人である。
教育トップクラスのフィンランドとの対比から、日本の教育のあり方について考えるべきである。
感想
入り口が違うのかも、というのがまず思ったところです。本書によると、フィンランドの教育は権利の保証を強調しています。いかなる理由によっても差別されず、また個人として平等に扱われることが核になっている。故に多様性が認められる。問題が起きた際には、権利の根拠となる法律や憲法が基準になるし、市民もそれを理解しているので、判断の根拠が分かり易いです。
一方、日本では結果が同じであることが求められている印象を日々受けます。お遊戯会で桃太郎が3人いる等も、結果の同一性を求める象徴だと思います。出発点がどんなに平等でも、ゴールが同一でないと不平等と取られてしまう。故に、多様性は認められないし、問題が起きた時にはその起点になった人を生贄にして解決する。法律や憲法という明確なルールに準拠した判断ではないので、明確な回避方法がなく、問題を起こさないように生きることを求められる気がします。
日本だって日本の権利に準拠した多様性が認められるようになって欲しいし、個人の権利を守るという意識が、大人にも子どもにも根付くといいなと思います。