![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121898100/rectangle_large_type_2_792c8a2a966d32bb9a89155d0cdf2602.png?width=1200)
人生のセーブボタン
眠れない夜が続いていた。ちゃんと原因はわかっている。でも、時間が解決してくれるのを待つことしかできない。少し前まで真っ黒だった空が青くなっていく様をただぼーっと眺めていると、世界は朝になっていた。冷房のいらない季節になったと思ったらすぐに暖房のいる季節になった。ここ日本はもう春と秋がなくなり、夏と冬の二季制になったのかもしれない。少し前まで布団の上で寝ていた猫は今ではもう布団の中で眠っている。猫は家で一番温かい場所を見つけるのが得意らしい。つまり今一番温かい場所で僕は眠れずにいるということだ。困った。実に困っていた。どうすればいいか途方に暮れながらずっと困り果てていた。時計の針はジーっと音を立てて少しずつ進んでいく。止まることをやめない時間と反比例して、ずっと同じ場所に立ち尽くしている。少し成長したかもしれないと思っても、またさらなる壁が立ちはだかるの繰り返し。自らの心が悲鳴を上げていた。どれだけ体を休めても、心が休まっていない。挑戦とか成長とか、寄り添うとか教育とかありとあらゆる言葉がずっと体からこびりついて離れない。学生時代からずっと休むのが下手だった。いや。休みたくでも休めない生活を送っていた。いつしか休むに罪悪感を覚えるようになって、スケジュールの空白を死ぬ気で埋めていた。その結果が難病の発症でたくさんの人に迷惑を掛けた罪だ。限界を知っているからこそ。ブレーキを踏むことができる。友人に「まだ大丈夫と思えるうちは大丈夫なのかもしれないと」伝えたら、「そういう人が一番危ない」と返ってきた。自分のことは一番自分がわかっているはずだった。でも、それは嘘だった。走り続けなければ成長できないと思っていた。その昔、体力作りのために毎日5キロランニングしていた。それを元陸上部の友人に伝えると、「それはずっと筋肉の細胞を殺しているだけ。筋肉は使って休めることで成長するんだよ」と言われてハッとした。どうやら休息も成長に繋がるようだ。成長したければ、頑張った後はちゃんと休む。そうすることで体に少しずつ筋肉がついていく。なんて頭ではわかっているのだけれど、きちんとその教えを守れない僕に誰かセーブボタンを押させてほしい。そんなことを考えていると、また朝になっていた。
いいなと思ったら応援しよう!
![サトウリョウタ@毎日更新の人](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77022172/profile_dd8ad96b5debfa72f56a2929001585c8.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)