オススメの超大河小説、『ワイルド・スワン』
『ワイルド・スワン』読みきりました。
おおよそ800ページ。
新年からよみはじめて2週間ほどかかった。
長かったー。
内容は、親子三代の女性からみた20世紀の中国。
その間、清朝、軍閥、国民党、日本、中国共産党、、、と
つぎつぎと政権がかわるなか、
主人公たちや家族友人たちが歴史に翻弄されていく。。
正直、ここまで人間の欲深さや残虐さがえがかれた作品もめずらしい。
しかも、実体験にもとづく作品。
内乱、戦争、内部告発などなどの非日常のなかでの出来事、
誇張された表現などもあるかもしれない。
でもその多くは実際あったことと考えるとゾッとする。
100年ほどまえではふつうに女性の纏足(てんそく)があたりまえだったりとか。
親が娘の足の骨を砕いて、足の指を折りたたんでグルグル巻にして、、
なんてことを平気でやってる。
その理由が、ちいさな足の女性に男性が欲情したからとか。
纏足の女性がよちよち歩く姿がたまらん、とか。
わけわからん。
纏足だけでも狂気の沙汰だけど、子どもが売られたり、妾を何人もとったり…
無実で捕まって拷問受けたり、餓死したり…
なんて話が延々と続いていく。
子どものころ『北斗の拳』をみて衝撃をうけて、こんなのウソだって思ってた。
でもその数十年まえ、それと似たような、いやそれよりももっとタイヘンな時代が現実にあった。
その、胸にドーンとくる重さといったら。
むかし読んだフランクルの『夜と霧』、これは過酷なアウシュヴィッツのはなし、
『マウス』、これもアウシュビッツで生き延びた父のはなし、
『チャーズ』、こちらは『ワイルド・スワン』の時代、日本人家族の目線からかかれたはなし、
これらの著作がアタマの中でよぎったけど。
やっぱり今回の『ワイルド・スワン』がいちばん、衝撃的だった。
人間の悪の部分、その闇も濃いんだけど。
そんなジゴクのような時代のなかで、なにかスジをとおした人、善を信じた人も少なからずいて。
『ワイルド・スワン』では著者のお父さん、『チャーズ』でもおなじくお父さん。
信念をもって、まわりに流されず、そのため迫害もされながらも懸命に生き抜く人たちにも書かれてる。
こういう「いいひと」って、たぶん混乱の時代ではたっくさん命を落としてきたとおもうんだけど。
『ワイルド・スワン』でも『チャーズ』でも、だれかに施したことが、めぐりめぐって自分たちを助けるシーンがあったりする。
こういうとき、因果応報ってあるんだーって感動するし、
闇のせかいのなかでほんと輝いてる。
歴史は繰り返すっていうけど、
未来がちょっとかわったら、混沌とした世界に戻りえるかも。
そんな風に想像しながら人間の善悪の振り幅を知るのに最適な1冊。
そしてとにかく主人公の一家が歴史に翻弄されていくストーリーはまるで激流。
一度よみだすととまらなくなるので要注意。
あと、エグい表現もふくめて、物語は緻密に客観的にかかれていて、暴力的なシーン多めで、ニガテなひとはほんとやめたほうがいい。
トラウマになるレベルです。
内容からすると、マンガ本50冊以上のコンテンツの濃さ。
1990年代のベストセラーなので古本OKの人は上下巻でメルカリで500円くらい。
高コスパ。でも、単行本自体も上下巻800ページ超と、暴力的。
移動中によみたい人はKindle版がオススメ(ときどき30%ポイント還元してますよ)。