新しいことを始める気持ちになってほしい。
私の整体院に10年以上、通って来られている、60代後半の女性がいます。その人は、無趣味でネットは一切触らず、テレビの録画も触ったことがないそうです。
施術しながらお喋りをするのですが、なかなか思うように話を進めることができません。と言いますのも、「もっとこうすればいいのに」と私なりのアイデアを話すのですが、「でも・・・」「いや、しかし・・・」「そんなこと言うけど・・・」と必ず否定文から返ってきます。
否定される言葉を聞くたびに、「また失敗した」と考えてしまいます。整体しながらのお喋りですから、他愛もない世間話でいいのに、お節介な気持ちが出てしまいます。私の悪い癖です。
例えば、テレビのレコーダーを触ったことがないと言われるので、「じゃあ、一度触ってみようかしら」と言わせようと試みます。これは何度か試しましたが、一度も成功していません。
趣味のない人は認知症になりやすい。
無趣味で何も興味のない人ですから、この先、認知症になることが心配なのです。だから、何かきっかけを作って、新しいことを始める気持ちになってほしくて、いろいろな角度から話を振っていきます。
ガラケーからスマホに変える気になってもらう方法や、運動するきっかけの話などを振りますが、「そんなに勧めるのなら、一度やってみようかしら」と言われたことが一度もありません。
他にもいろんなジャンルの話を振って、なにか興味を持ってもらいたいと願うのですが、まったくダメです。今日もまた失敗しました。
芸能人に興味ないし、本は読まないし、映画も観ません。運動もしないし、食べることにも興味を示しません。なかなか手強いです(笑)
それでも月1〜2回は整体に通って来られるわけですから、私が嫌われていることはないと思われます。
この人のおもしろいところがひとつあります。「筋肉って、こうなっていて、こんな働きもあるのよ。昨日テレビでやっていたわ。」と私に教えてくれます。テレビで見たストレッチの効果を話してくれたこともあります。本人はやらないんですけどね。私はいつも「へ〜」って応えておきますが、釈迦に説法だと本人は気付いていません。
会話のキャッチボールが難しいので、いつも頭を悩ませられます。
喋ることは好きみたいです。話の筋道ではなく、私が発した単語に反応して、話を取ってしまい、自分の話にすり替えていきます。話の筋を通して最後まで話す前に、話を取られてしまうので、こちらの思いをちゃんと伝えることが、そもそも難しいです。
あくまでも施術しながらのことなので、話がどこへ流れようが別に気にしません。と言いたいですが、時々私がうつになるんじゃないかと思えるくらい、終わった時には放心状態になることがあります。それでもいつかは「じゃあ、やってみようかしら」と言わせてみたいと考えています。