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読書感想文 『存在のすべてを』

【存在のすべてを】



・2024年本屋大賞ノミネート



物語は『二児同時誘拐』から幕を開ける。


新聞記者の男と、誘拐された児童と接点のある女の2視点から徐々に真実が明かされていくのだが、この物語は事件の真相に迫る、ただの誘拐犯罪小説では到底収まりきらない。


男は誘拐事件の視点から、女は絵画の視点からそれぞれ物語は進んでいく。読者からすればこの2つがどのように繋がる或いは交差するのかを楽しみながら読んでいくだろう。しかし、こんなラストを予想できる人がどれだけいるだろう。


物語前半での人物たちの努力や背景や過去については、圧倒的な展開が待つ後半への土台となっている。終盤、読者は事件の真相を知ることになるが、そこでようやく、これが誘拐事件に目隠しされた愛情に満ちた物語であったことを悟る。

帯やSNSでも同様な感想を見かけていだが、実際読んでみると、真相を知るまで全くもってそんな物語とは思わなかった。それくらい、分かっていてもある意味どんでん返し的な感動があった。


そうは言っても、これは決して幸せな物語ではない。
間違いなく、壮絶な人生を生きている。

だからこそ、その3年間は一生以上の愛でできているのである。


この物語の余韻はどこで「諦め」たらよいのだろう。
或いはどこまでも「諦め」ないまま終わらせられないのだろうか。




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