
読書感想文 『禁忌の子』
【禁忌の子】
◽︎鮎川哲也賞受賞
恐らく、大多数の読者が読む前後で「禁忌の子」に対する印象を覆されると思う。だからこそ鮎川哲也賞受賞に至ったのだろうし、近頃のSNSではこの本の読了投稿を見ない日は無いと言っていいほど、読書好きを魅力しているのだろう。
そもそものあらすじが、主人公である医師が自分と瓜二つの溺死体と邂逅するというもの。
そこからその男の身元を探していくうちに辿り着く真実が「禁忌の子」に繋がっていく。
これだけのものを読まされると、人が生まれ、人生を歩んでいくことの重さと幸福さの両方が心に容赦なくのしかかってくる。自分がどれだけ「ふつうに幸せに生きていられてるのか」を思い知る。
医療が進歩することは大切で、大概は人類にとってポジティブだろう。ただ、それは技術的な成長であって、そこに倫理観の成長が追いついていない印象を受けた。
極論を言えば、倫理観としては皆が幸せなら良いのだろうけれど、例えばこの小説を事例としたら当人はどんなふうに現実を受け止めて幸せになれるのかは医療技術とは全くの別である。
読んだ今なら言えること、この小説の「禁忌の子」、現実にいるかもしれない「禁忌の子」、どちらにも幸あれ。
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