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クラシック音楽は即興演奏?

クラシック音楽というと楽譜があって、それを演奏するというイメージが強いかもしれませんが、バロック音楽時代や古典派音楽時代は即興演奏も重要な部分でした。

バロック時代(1600~1750頃。諸説あり)には通奏低音がありました。これは低音部の旋律から数字を頼りに自由に伴奏を付けるものでした。

すなわち低音部の楽譜に書かれている数字を読み取り、演奏者の感性で和音を弾いていたことになります。これは当時の作曲家たちは楽譜にはその伴奏パートを記載していません。完全に演奏者に委ねていたのです。

こちらが通奏低音の例です。
ブクステフーデ(1637?~1707)というデンマークで生まれドイツで活躍した作曲家のトリオ・ソナタのパート譜です。ここでの通奏低音はチェンバロ(ハープシコード)であり、左手の旋律のみが記載されており、その音符の上に小さく数字が書いてあります。この数字を頼りに右手で自由に伴奏を付けるのです。

ブクステフーデのトリオ・ソナタ通奏低音パート

そして、当時の楽譜には強弱記号やテンポが記されていませんでした。
テンポに関しては、当時の演奏家たちは楽譜に書かれていなくても適切なテンポで演奏することができたのです。

例えば1小節に一つの和音しかない場合は速めに演奏されていたし、8分音符ごとに和音が変わる場合はかなり遅く演奏しなくてはいけない。こういったことを当時の演奏家たちは知っていたのだ。だからテンポを記す必要がなかった、ということです。

もし現在バロック時代の楽譜をみたときにAllegroなどの速度標語が書いてある場合は、それは第3者による付け足しかもしれない。

時代を経て古典派音楽の時代に到達していた時は通奏低音はほぼ消えかけていた。一部の作品は当時の通奏低音を利用して作られている曲も存在するが、伴奏部分に関してはほぼ作曲者によって楽譜に書き込まれることとなりました。

この古典派時代における即興演奏といえば、協奏曲によるカデンツァの部分でしょう。

カデンツァとは協奏曲においてオーケストラの伴奏を伴わない、自由で即興的な部分を指します。

このカデンツァの部分は基本的には楽譜に記されておらず、演奏者により自由な即興が行われていました。

こちらはモーツァルト(1756~1791)のピアノ協奏曲第23番イ長調K488のスコアですが、真ん中のパートがピアノパートでCadenza(カデンツァ)と記されていますね。そしてカデンツァの終わりはその和音で終わってくださいねと指示しています。

カデンツァの部分

※9:03~からカデンツァ開始です。

彼は優れたピアニストでもあったので、この時代の一連のピアノ協奏曲は自身が開く予約音楽会において披露するために作られたものです。

このようにカデンツァは自由な即興を楽しむ場面でありましたが、やがて様々な演奏者、あるいは作曲家によってカデンツァの部分が楽譜の形で遺されていくようになりました。

現在、古典派の協奏曲を演奏する場合カデンツァの部分は誰かが作ったものを演奏することが普通になっています。完全に即興で演奏する方が珍しくなってしまったのです。

そしてロマン派時代に突入すると、カデンツァの部分はすべて作曲者によって楽譜に記載され演奏者の自由度は完全になくなりました。
クラシック音楽は完全に楽譜の音楽へと変わっていったのです。

もちろん下手な即興によって曲全体の雰囲気を壊してしまう可能性はあります。しかし、ある程度演奏者の自由がきいていたこの時代は自身の楽器の腕をみせる絶好の機会だったのです。技術、音楽の構成の理解度の深さなど総合的な音楽力を問われるのがカデンツァの部分だと思います。

是非今のピアニストにも完全即興なカデンツァを演奏してみてほしいですね。


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Ryo Sasaki
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