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一歩進んだ音楽理論 和声学編

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和声についてのあれこれをご紹介していきます。
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和声の学び 一歩進んだ和声学

以前簡単な音楽理論を紹介していました。 今回から一歩進んで和声学を紹介していこうと思います。 ここでは古典的な和声を紹介していきましょう。 こちらも合わせてご覧いただくとより分かりやすくなると思います。 1 和声の学びにあたって音階(スケール)の起点となる音を主音(トニック)といいます。 ここでは主音をローマ数字のIで表します。 以降上に向かってII、III、・・・と表します。 最初は3和音(トライアド)を中心として扱います。 和音というのは基本的には3度の音の積み

和音の配置 一歩進んだ和声学 Part 2

今回は実際に和音をどのように配置するかを見ていきたいと思います。 今後は4声体(パート)和声を基盤としてお話を進めていきます。 混声四部合唱や弦楽合奏など様々なジャンルに適応できるものですので、参考にしていただければ幸いです。 1 4声体先程述べた通り、今回から紹介する和声学は4声体和声をベースにして紹介していきます。 ソプラノパート、アルトパートのようにこのパートというのは日本語では声部(せいぶ)と言います。この和声学では4つの声部を使って和声というのはどういうものか

和音の配置における制約 一歩進んだ和声学 Part 3

全開で和音の配置の基礎的な部分を学びましたが、配置は完全に自由に行えるわけではなく様々な制約があります。この制約を身に着けることが和声の理解を深める第1歩となります。では見てみましょう。前回の記事と合わせてご覧いただくことをお勧めいたします。 1 2つの音の関係特定の2声部において2つの音が同時に聞こえている時、これら2つの音は同時関係にあるといいます。 例えばソプラノとバスが同時に音が鳴っている時はソプラノとバスは同時関係にあるといえます。 この和声学では基本的に4声

和音の配置における制約② 一歩進んだ和声学 Part 4

今回は同時ー継時関係における禁則を見ていきましょう。色々な制約がかけられているので、和声を学ぶについて一つの山場となっています。 前回の記事と合わせてご覧ください。 1 連続1度、連続8度2声部の同時進行において、先行音程と後続音程とが 共に完全8度(どちらか、または両方が複音程の場合も含む)の時を連続8度 共に完全1度(どちらかが完全8度の場合を含む)の時を連続1度 といいます。 連続8度、連続1度は禁じられます。 例えば4声体になった時に、このような進行をしてしまっ

和声における連結 一歩進んだ和声学 Part 5

和声における禁則を学んだところで、実際に4声体における和音、すなわちコードはどのように配置されるのかを見ていきましょう。 1 連結4声体において、和音を二つ相ついで連ねることを連結といいます。つまりコード進行はこの連結の繰り返しによって成り立っているということになります。 この時に 前の方の和音を 先行和音 後の方の和音を 後続和音 といいます。 連結される2つの和音の構成音のうち、同じ音が含まれている時はその音を共通音といいます。 これらをふまえて実際に連結を行いま

和声における連結② 一歩進んだ和声学 Part 6

前回では様々な和音の連結を行ってきました。今回では例外的な連結についてご紹介します。 1 II→Vの連結IIからVへの連結の場合はレ(D)の音が共通音ですが、この時は保留せずに後続和音(V)に最も近い音に下行させて、配分を一致させます。すなわち、ここではレの音をシ(B)の音に下行させます。 その後、残りの声部を配分一致させるように配置します。 開離配分でも見てみましょう。 もし共通音を保留した場合はこのようになります。 こちらは禁則を破っているわけではないので、理論

カデンツ 一歩進んだ和声学 Part 7

今回はカデンツについてを紹介していきます。和声というのは無秩序に和音を並べるだけでは成立しません。文章のように正しい語順のようなものがあるのです。 英語のS(主語)+V(動詞)+O(目的語)+C(補語)のような文構成が和声にもあります。和音はそれぞれ役割を持っており、その役割に応じて正しい和音配置を行っていく必要があります。いったいそれがどういうものなのか、見ていきましょう。 1 トニック、サブドミナント、ドミナントまずはこの3つの言葉、トニック、サブドミナント、ドミナン

和音の第1転回形 一歩進んだ和声学 Part 8

今回は和音の転回形、すなわちオンコードについてをご紹介します。 オンコードは根音(ルート)以外の音が最低音となる和音の形です。すなわち第3音や第5音が一番低い音に配置される和音の形です。 ここでは第3音を最低音とする第1転回形を学んでいきます。この形になった際に色々な制約がさらに生まれます。では見ていきましょう。 1 第1転回形先程述べた通り、和音の第1転回形とは第3音が最低音(バス)に配置される和音の形です。この和音を表す場合はローマ数字と右上に小さく1を表記します。

和音の第2転回形 一歩進んだ和声学 Part 9

今回は和音の第2転回形を学んでいきます。こちらは和音の第5音が最低音(バス)に配置される和音の形で、この形は現段階では特定の形でしか使用されません。あまり覚えることは少ないので第1転回形よりは楽だと思います。ではどんなものなのか見ていきましょう。 1 第2転回形先程述べた通り、第2転回形は和音の第5音がバスに配置されている形です。この和音を表すときはローマ数字に右上に小さく2を付けます。 46の和音とも呼ばれることがあります。 上3声は基本形と同じく、根音、第3音、第5

V7の和音 一歩進んだ和声学 Part 10

今回はV7の和音を学んでいきます。 いわゆるセブンスコードですが、3和音に7度の音を付け加えることで出来上がります。ここではドミナント和音であるV7を扱いながら、この和音のルールなどを見ていきましょう。 1 7の和音7の和音のことをいわゆるセブンスコードといいますが、この和音群は先程述べた通り3和音に7度の音を加えたものをいいます。 7の和音を表すときはローマ数字の右下に小さく7と表記します。 このように3和音に付加された構成音を付加(構成)音といいます。付加(構成)音を

V7の和音根音省略形体 一歩進んだ和声学 Part 11

今回取り扱うのがV7の和音の根音省略形体というものです。その名の通りV7の和音から根音を取り去ったものであり、実質VIIの和音と同じものになります。しかしここではV7の和音根音省略形体とVIIの和音は音は同じでも明確に違うものとして取り扱います。では、どのような機能を持っているのか見ていきましょう。 1 V7の和音根音省略形体V7の和音根音省略形体を表すときはV7に斜線を引きます。 V7の和音根音省略形体は3種類の低音位があります。 V7の和音根音省略形体第5音低音位(

V9の和音 一歩進んだ和声学 Part 12

今回はV9の和音について学んでいきます。 V9の和音はV7の和音に9度上の音が付加された和音です。ポピュラー音楽ではテンションコードと呼ばれるものの1つです。このV9の和音にも色々な制約があるみたいです。さっそく見ていきましょう。 1 V9の和音先程述べた通り、V9の和音はV7の和音に根音から9度上の音を付加したものです。これを9の和音といい、V9で表します。またV9の和音は「属9の和音」と呼ばれます。 和声学においては9の和音はV音の上だけに形成されるという見解をとって

V9の和音根音省略形 一歩進んだ和声学 Part 13

今回はV9の和音根音省略形についてを学んでいきます。V9の和音の根音を省略した形で、構成音としてはVII7の和音と同一になります。ここではVII7の和音とV9の和音根音省略形は別の機能を持つ和音として区別されます。ではV9の和音根音省略形はどのような機能を持つのか、見ていきましょう。 1 V9の和音根音省略形文字通りV9の和音の根音を省略した形です。今まで省略されていた第5音もここでは含まれます。表記はV9のVの部分にスラッシュを付けます。 V9の和音根音省略形では三つの

D諸和音の総括 一歩進んだ和声学 Part 14

今回は今まで登場したD(ドミナント)諸和音のまとめです。加えて補足事項を少し紹介しようと思います。 1 D諸和音の総括ここで今まで出たVの和音をまとめます。 (i) Vの和音 Vの和音は基本形、第1転回形、第2転回形の三つの形を持ちます。 それぞれの後続和音は Vの和音→Iの和音、Iの和音第1転回形、VIの和音 Vの和音第1転回形→Iの和音 Vの和音第2転回形→Iの和音、Iの和音第1転回形 となります。 (ii) V7の和音 V7の和音は基本形、第1転回形、第2