V7の和音根音省略形体 一歩進んだ和声学 Part 11
今回取り扱うのがV7の和音の根音省略形体というものです。その名の通りV7の和音から根音を取り去ったものであり、実質VIIの和音と同じものになります。しかしここではV7の和音根音省略形体とVIIの和音は音は同じでも明確に違うものとして取り扱います。では、どのような機能を持っているのか見ていきましょう。
1 V7の和音根音省略形体
V7の和音根音省略形体を表すときはV7に斜線を引きます。
V7の和音根音省略形体は3種類の低音位があります。
V7の和音根音省略形体第5音低音位(上の画像の真ん中)の関しては特殊な用法があるので後に回します。まずは残りの2つを使い方を見てみましょう。
2 V7の和音根音省略形体第3音低音位、第7音低音位
この二つは上3声に第5音を二つ含めるのが特徴です。第3音、第7音は限定進行音なので重複をしてはいけません。
V7の和音根音省略形体第3音低音位は後続和音に必ずIの和音を置きます。
V7の和音根音省略形体第7音低音位は後続和音に必ずIの和音第1転回形を置きます。
二つある第5音(II音)のうち、片方は2度下行してI音へ進行します。
もう片方は4度上行、または5度下行してV音へ進行します。
3 V7の和音根音省略形体第5音低音位
V7の和音根音省略形体においてはこの第5音低音位が最も使われます。
上3声は第3音、第5音、第7音すべて含めたものと例外的に第3音1つと第7音が2つ重複した形が使われます。
前者の最適な配置が、
① 第3音高位の密集配分
② 第5音高位の密集配分
➂ 第7音高位の開離配分
後者の最適な配置が
第7音高位のOct配分
となっています。
この和音はV7の和音第2転回形と同じで、後続和音はIの和音またはIの和音第1転回形のどちらかを使用できます。
上3声の第5音(II音)はこちらも4度上行、または5度下行してV音に進行します。
またV7の和音根音省略形体第5音低音位→Iの和音第1転回形の連結をする際は、バスと下行限定進行をした声部とが反行かつ順次進行を続けることが条件です。これはV7の和音第2転回形→Iの和音第1転回形の連結と同じ条件下です。
そして見てわかる通り、配分が一致せず配分転換が起こります。
この配分転換避けるために例外的な進行をすることができます。
第7音が内声(アルトかテノール)にある場合は、例外的にそれを2度上行させることができます。
これにより配分を一致させることができ、かつIの和音第1転回形に進んだ際にも第3音を重複せずに済みます。
そして上3声が第7音高位のOct配分の場合、
ソプラノの第7音は2度下行
もう一方の第7音は2度上行
します。
後続和音はIの和音またはIの和音第1転回形のどちらかを使用できます。後続和音をIの和音第1転回形にする場合は、先程のバスと下行限定進行をした声部とが反行かつ順次進行を続けることを忘れないようにしましょう。
4 まとめ
V7の和音根音省略形体の中でよく使われるのがV7の和音根音省略形体第5音低音位です。
最適な配置が
① 第3音高位の密集配分
② 第5音高位の密集配分
➂ 第7音高位の開離配分
④ 第7音高位のOct配分
となっています。
①~③の配置の場合は
第7音が内声にある場合は例外的に2度上行することができます。
④の配置の場合は
ソプラノの第7音は2度下行
もう一方の第7音は2度上行
となっています。
さて、次回はV9の和音を学んでいきます。いわゆるナインスコード、すなわちテンションコードと呼ばれているものの一つですが、和声学においてはどのような機能を持っているかを詳しく見ていこうと思います。
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