地政学リスクとは〜投資をする上で養うべき視点〜
最近投資を始めたという方も多いかと思いますが、
ご自身がどのような国や地域に投資をしているか
理解されていますでしょうか?
例えば、つみたてNISAで人気のファンドとされる
三菱UFJ国際投信のeMAXISシリーズの
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
通称オルカン
こちらの対象地域と構成比率は下図のとおり。
日本を含む先進国および新興国の株式市場の
値動きに連動することを目的としているため、
合計50地域への分散ファンドとなっています。
現在、ニュースでよく見かける「ロシア」も
新興国として「12.9%」のうちの1国として
選択されています。
下図はeMAXIS Slim全世界株式の過去推移です。
実際に、今回の「ウクライナ問題」も1つの要因
として、4月以降に大きく下落しています。
今回の「ウクライナ問題」は投資の世界では
「地政学リスク」の1つと言われています。
本日はこの「地政学リスク」について説明して
いきたいと思います。
○そもそも地政学とは
「地理学」と「政治学」を合わせて地政学といい、
地理的な位置関係によるものや、政治的なもので、
これらの条件を重視する学問分野です。
そして、これら地政学を踏まえ、その地域や世界
経済に影響をあたえるものを「地政学リスク」と
呼ばれています。
例えば、下記のようなことが分析されます。
・その国はどこにあるのか
・その国はどんな国に囲まれているのか
・どのような歴史があるのか
・どのような国と親交があるのか
・誰が統治をしているのか
・どこに軍事的拠点を構えているのか
・どこに物流拠点を構えているのか
こういった1つ1つの地理的、政治的な分析を
行い、それに伴うリスクを考えます。
投資においては、この地政学的リスクによる
影響も大きく関わっているため、投資する先や
ファンドがどういった地政学的リスクを含んで
いるのかも確認をすべきです。
本日は、地政学入門として「地理的な」2つの
考え方に絞ってお伝えしたいと思います。
①ランドパワーとシーパワー
「ランドパワー」とは、「陸=ランド」に経済的
拠点や物流拠点、軍事拠点などを持つ勢力のこと
を指します。
例えば、ユーラシア大陸に広大な国を構える
ロシア、中国などが当てはまります。
一方で、「シーパワー」とは、「海=シー」に
拠点を持つ勢力のことを指します。
例えば、アメリカ、日本などが当てはまります。
歴史を紐解くと、このランドパワーとシーパワー
の国々のせめぎ合いにより、歴史は作られてきた
といっても過言ではありません。
例えば、15世紀からスタートした大航海時代は、
シーパワー国家が陸路中心の物流から、海洋を
渡っての物流網を拡大するために、海を制覇した
時代でした。
そして、19世紀には産業革命など鉄道などが
発達し、ランドパワー国家による輸送力が世界を
淘汰した時代でした。
こういったランドパワーとシーパワーのそれぞれ
の国家による領土の攻守や貿易などにより、世界
経済は大きく成長してきました。
今回のウクライナ問題についても、ウクライナは
ロシアにとって歴史的に支配をしてきた兄弟国
といえる関係です。
そのウクライナが今回NATO(北大西洋条約機構)
入りを目指すとなり、ロシアにとって西側諸国と
良いクッション国となっていたウクライナを失う
わけにはいかないと、武力で鎮圧しようとして
戦争になっています。
これも大きく見ると「ランドパワー」に起因する
行動ですね。
②ハートランドとリムランド
ハートランドとは、ユーラシア大陸中央部から
北部の地域を指し、この広大なエリアを統治
すれば、巨大なランドパワーを得られるという
土地を指します。
現在のロシアがこれにあたります。
しかし、寒冷な地域でえることや雨が降らない
ことなど、人が生活するには過酷な自然条件で
あるため、文明が栄えることは難しい土地です。
リムランドとは、ユーラシア大陸沿岸地域を
指し、現在の東南アジアやインドなどがこれに
あたります。
この地域は温暖な地域で雨も降るため、農作も
行え、経済活動が活発なため、人口も集中します。
そのため、ハートランド国家はリムランド国家に
侵攻を行い、経済活動が豊かな諸国を支配しよう
としてきました。
ランドパワーとシーパワーは陸か海かという
国の勢力関係を表していましたが、
ハートランドとリムランドはその土地の条件
などの概念を指します。
この2つが地政学の「地理的」リスクとして
分析されるうちの一部分です。
ぜひ皆さんの投資における地政学リスクとして
何が当てはまるのかを知り、そのリスクを知った
うえで投資を行なっていただきたいと思います。
それでは。