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恐怖を興味に変える。〜海を越えて繋がる世界〜



小学生の時、地元にある銭湯によく行っていた。
その銭湯は3階建で、中にエレベーターがあった。


僕はそのエレベーターに乗り、3階にある露天風呂に行った。
エレベーターが3階に着き、ドアが開いた瞬間だった。

僕の目の前には、見たこともない不思議な生き物が二人、立っていた。

僕はとても怖くなり、エレベーターの「閉」ボタンを即座に押し、
そのまま下へ降りていった。
それ以降3階に行くことはなかった。

今までで見たこともないくらい大きくて、毛も多い。
顔立ちは明らかに僕の家族や友達とは違う。
あれは一体何だったのだろうか。


そして今なら分かる。
あの時エレベーターで会ったのは、欧米人だったということを。

あの頃の僕は、欧米人を生で見たことがなかった。
だから、日本人とは身体も顔も全く違う欧米人を、人間として見ることができなかった。  

その後も街で欧米人を見かけたら、あのエレベーターでの出来事がフラッシュバックしてくるので、僕は欧米人に目を合わすことすら出来なかった。


だが、

今の僕は、あの頃の自分とは真逆になった。


僕は恐怖を興味に変えた。


今では、欧米人を見ても何の抵抗もないし、少し目があって笑顔を交わし合ったら
自分から話しかけに行くくらいだ。
そして異文化で育ってきた相手から、面白い話しを聞き、
「いい話しが出来て良かった」と思えるようになった。


「あのエレベーターでの出来事を、今でも引きずったまま生きていたらどうなっていたのだろうか。」

僕はそう思うだけで怖くなる。

僕は外国人と関わるようになってから得たものはとても多いと思っている。 

外国人と言っても国によって様々なのだが、
日本人とは違う独特の話し方があるし、伝え方の表現も違う。
その国のローカルな話しも聞くことが出来たり、自分の知らなかった文化も知ることが出来る。

そして何よりも、
「自分って成長したな。こんな海を越えた言葉も生き方も違う、遠い国に住んでいる人間と話している。すごいな。」

そう思うことが出来るのだ。

なぜなら僕には、エレベーターでの出来事があるから。


世界は思っているよりも広かった。


僕はカナダのバンクーバーに少し住んでいた時期がある。
住んだ目的としては、英語を話せるようになる為、ハリウッド映画に出演するため、そして、海を越えた先に住んでいる人達は、どんな生き方をしているのかをこの目で確かめに行くためだ。

バンクーバーという街には、実に様々な人種の人間が住んでいる。
街には世界中の伝統料理屋もあるし、飛び交っている言語も様々だ。 

僕がバンクーバーを住む場所として選んだ一番の理由として、世界を知りたいというものがあった。
だから僕はこのバンクーバーという街を住む場所として選んだのだ。

バンクーバーに住み始めた頃、僕は英語を勉強するために語学学校に通った。
その学校には、アジア、南米、ヨーロッパ、中東など、英語をネイティブとしない国の人間が世界各国から来ていた。

僕はこの環境にとてもワクワクした。
なぜなら、こんなに様々な国の人間と同じ空間にいることなんて今までの人生でなかったからだ。
そしてこの環境は、僕の一番の理由でもある、「世界を知ること」
が出来るなと思ったからだ。

僕は同じクラス、隣のクラス、昼休みに会う人達に片っ端から声をかけた。
皆英語を学びに来ているし、ネイティブの言語で話しても分かり合えないから、もちろん会話は英語だ。
でも時にはGoogle翻訳を使いながら、必死に質問し、必死に答え、
海の向こうに住んでいる人達の生き方や文化をたくさん知ることが出来た。
そして、世界は自分が思っているよりももっと広いなと思った。

初めは怖かった。
今まで出会ったことのない国の人間、テレビで見るような美しい欧米人の女性、
「会話が成り立たなかったらどうしよう。」
「変な人だと思われたらどうしよう。」
「怖い思いをしたらどうしよう。」
いろんな恐怖感があった。

でも僕は、その恐怖を興味に変えて行動した。
そして海を越えた先に住んでいる人間と繋がることが出来た。

あの頃の自分が、今の自分を見たらびっくりするかもしれない。
エレベーターで会った欧米人が人間だと思えなかった僕が、
今ではそんな人達と仲良くご飯を一緒に食べている。
カフェで隣に座って会話をしている。

恐怖の先には素晴らしいことが待っている。

今の僕が思うことだ。 

「海外に住みたいけど怖い。」
「今の仕事を辞めて、好きなことを仕事にしたいけど怖い。」
「好きな女性や男性に声をかけたいけど怖い」 

生きていく中で恐怖は必ずある。

でも恐怖は興味に変えることが出来る。
そして恐怖を興味に変えて行動した先には、自分が思う以上に素晴らしいことが待っている。


人生は旅だ。


僕はバンクーバーから日本に帰ってくる前に旅に出た。

世界中の人間と話すことが出来た。友達にもなれた。
次は世界をこの目で見て確かめよう。
そう思い、旅に出た。

予算的にも余裕がなかったので、いくつかの島にしか行くことが出来なかったが、
僕はこの旅で、海を越えた繋がりをもっと感じることが出来た。

宿が見つけられなかったから、芝生の上で野宿をしたり、
食べ物屋が見つからなかったから、そこらへんに生えているイチゴを食べてみたり、旅は全てが快適なものではなかった。
でもそこで僕を助けてくれたのは、そこに住んでいる人達だ。

食べ物をくれたり、車に乗せてくれたり、現地の情報を教えてくれたり、
本当に助かった。そして本当に嬉しかった。 
自分も逆の立場になったら同じことをしてあげようと思った。

そして日本に帰国して、困っている外国人に何度も遭遇した。
僕はその度に、自分なりの精一杯の助けをしてきた。
この記事を書こうと思ったのも、充電器を探していた外国人に声をかけ、
僕が持っている充電器を貸してあげて、そのことに感謝してくれたことが嬉しかったからだ。

昔の僕だったら、怖がって声をかけることもできなかった。
でも僕は小さい頃の恐怖を興味に変えて、行動し、外国人と関わることに抵抗がなくなったから、こうやって声をかけることができたのだ。
そして小さなことだが、「ありがとう」と言ってもらえた。

人間は自分がしたことが、人から感謝されるほど嬉しいものはないと僕は思う。
自分がしたことに何も見返りは求めない。
僕からしたら、今まで僕を助けてくれた人達への恩返しだ。

人間は皆同じだ。住む場所が違っても、育ってきた場所が違っても、言語や文化が違っても関係ない。

人間は一人では生きていけないし、お互いが支え合って生きていくことが大切なんだ。

海を越えた繋がりが、僕に教えてくれたことだ。


僕はこれからも旅をしたい。
人生という旅の中で、世界中を旅して、世界をこの目で見て、この身体で感じたい。
そして海を越えた繋がりを大切にし、愛と感謝の気持ち、支え合いを大切にして生きていきたい。

こばりょう。



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