32年間の人生で最大級に泣いた。小説『ピアノマン』が最高にジャズだった件。
小さな頃からたくさんの物語を読んできた。
小学校の頃は地元の数々の図書館を巡って『ズッコケ三人組』をほぼ全巻読破したし、中学の図書館司書の先生の紹介された伊坂幸太郎の小説は当時出版されたものはおそらく全シリーズ読んだと思う。ハリーポッターシーリーズも出版日に本屋にわざわざ並んで買うほど好きだったし、視力が悪くなったのも就寝前に薄暗いベッドの上で小さな読書灯を頼りに魔法学校の世界に入り込んでしまっていたのが原因だと思ってる。
大人になってからも旅先に司馬遼太郎の『峠』や高田郁の『銀二貫』などを持ち歩いて読んでたし、毎月テーマに合わせた小説とコーヒーが届く『ものがたり珈琲』も定期便で頼んでる。
そのくらい小説や物語が好きで、数多くの作品を読んできた。
そんな僕にとって【 人生で最高の一冊 】と断言できる作品に出会った。
それが『ピアノマン: 『BLUE GIANT』雪祈の物語』だ。
漫画原作からスピンオフしたアナザーストーリーを書いた作品。
ジャズ漫画『BLUE GIANT(ブルージャイアント)』の登場キャラである沢辺雪祈(さわべゆきのり)を主人公にした物語になっている。
一言で表すなら「ブルージャイアントが好きな人は全員読むべき小説」。これ以上の説明は不要だと思う。とにかく漫画や映画でブルージャイアントの魅力にハマった人は全員漏れなく読んだ方がいい。
唯一自宅に置いている漫画が『BLUE GIANT』なぐらい漫画原作の超絶ファンだった僕の勝手な意見だが、
という形でブルージャイアントは完成したなのだと思う。だから、漫画と映画を見た人は、小説も読んだ方がいい。読まなきゃ損してる。
この記事では、小説『ピアノマン』の魅力を、原作ファンである僕が全力で3つほど紹介してみました。
① これぞブルージャイアント!緩急の妙!
漫画『BLUE GIANT』は “音が聴こえてくるジャズ漫画” として人気を博してきました。
特にたまに挟まれる「完全セリフ無し回」は、セリフがないにも関わらず声や音が聴こえてくるとブルージャイアントを象徴する回になっています。
僕自身、初めてブルージャイアントを読んだときには “日本編” と呼ばれる全10巻がすでに完結しており10巻を一気に読み切ったんですが、途中まで「完全セリフ無し回」があることに気づかないで読んでいたほど。
途中で「あれ?セリフがない・・・ぞ?」と気付いたときの衝撃は鳥肌が立つほどでした。
そんな漫画で描かれてきた緩急が、小説にも反映されているんです。
このページを見てもらうとわかりますかね?
右のページは「雪祈が周りのことを考えながら弾いているシーン」。
改行することなく文字がビッシリと書かれてる。
左のページは「雪祈が無心になってソロを演奏しているシーン」。
20文字以下の短文を改行してリズムよく書かれてる。
書いてある言葉も頭の中で鮮明に描写させてくれるほど秀逸なのだけど、それよりも小説でこの「緩急の表現」を使ってくれたことに壮大なブルージャイアント愛を感じました。これこれコレー!!て感じ。ジャズってる。
② アオイちゃん!お母さん!ありがとう!
超絶ネタバレになるのだけど、この小説では「沢辺雪祈が上京する前の幼少期から高校編まで」も書かれています。
漫画でも映画でも18歳までの沢辺の話はほとんど触れられていなかったので、(アナザーストーリーとは言え)そんな設定だったのかとブルージャイアントファンなら胸アツな内容がたくさん出てきます。
中でも、雪祈がピアノを始めるキッカケとなった「お母さん」と、ピアノに向き合うキッカケとなった「アオイちゃん」のエピソードは、ファンなら気になるところだと思います。
そこが、かなり、分厚く、書かれてます。
個人的に「そうだったんだ」と思った内容をネタバレ気にせず箇条書きにしてみました。
他にもたくさんあった気がするし、ここに書いたことも正確かどうかわからないけど、原作ファンであれば、このひとつひとつを読むだけで泣けてくると思う。(僕も思い出しながら泣きそうになってる)
絶賛連載中の原作は現在アメリカ編が進んでいて、そろそろ雪祈と大が再会しそうな展開になってきているんだけど、お母さんとのエピソードやアオイちゃんとの関係性を知った上で再会を果たすシーンを見るとまた感動がひとしおな気がする。このタイミングで小説を出したのは計算通りなのかもしれない。
あとね。原作コミックは巻末に特別インタビュー(宮本大が世界一のジャズプレーヤーになった後の世界線で主要な人物にインタビューしている様子の特別トラック)が載っていて、アレを楽しみにしている人も多いと思います。
それ、小説でも採用されてます。
これも原作ファンにはたまらない。「あぁ章末のインタビューあるんだ…」ということだけで嬉し泣きしそうでした。
ちなみに、小説版のエンディングは映画と同じく「ソーブルーのステージに3人で立つ」という結末に向かうんですが、物議を醸した “病院を抜け出す” というところの裏エピソードも書かれてます。
抜け出しを許した医者の判断の理由。
抜け出せてあげようとする両親の葛藤。
ここも映画を見た人なら感動間違いなし。このラストスパートはほぼズーッと涙で文字が滲んでました。登場人物全員ジャズってるからやばい。
③ 漫画でも映画でも描かれなかった感動話!
そんなラストスパートより僕が涙したのは、別のエピソード。
わかるかな?漫画でも7ページしか描かれず、映画でも同じぐらいのボリュームしか描かれてなかった、サインを断ってしまった「豆腐屋のおじさん」の話。
あの豆腐屋さんとの話がね、しっかり描写されてるの。ここだけは引用して紹介させてほしい。
僕の涙腺は、ここで崩壊した。
第4章の終盤に入るあたり。ソーブルーの平さんにボロカスに言われて、テイクツーに引きこもってピアノを一心不乱に弾いて、大と玉田を自宅のアパートに呼んで自分の恥ずかしい部分を吐露して、そして、アオイちゃんとの再会に繋がっていく。その流れの中でのこのエピソード。
全6章構成のこの小説が最高のだと悟ったのは、この第4章が全てだったと思う。第4章を読み終わったとき、一度本を閉じた。感情がグチャグチャで読み進められなかった。豆腐屋のおじさんも、死ぬほどジャズだった。
余談:宮本大の知られざる恋愛模様も!?
雪祈に関するオリジナルストーリーだけじゃなく、宮本大に関する独自物語も綴られています。それがまさかの恋愛の話。
映画では恋愛要素は一切なかった。漫画原作では高校時代の女子バレー部の子との恋愛エピソードが綴られていたけれど、小説版では「東京で出会ったラーメン屋の女の子」との恋愛模様が描かれている。
これがまた、いい。
特に最後に断られるところ。雪祈と玉田は隠れて恋路の行方をこっそり隠れて見守っているんだけど、その二人の反応と同じように複雑な気持ちになった。ここも引用する。
こんな描写になるぐらい、この告白シーンはグッとくる。
ぜひ宮本大の知られざる恋愛模様を読んでみてほしい。
まとめ:ブルージャイアント好きは全員読め!
ネタバレ全開で小説『ピアノマン: 『BLUE GIANT』雪祈の物語』の素晴らしさを語ってきた。想いが溢れすぎて、いつもの記事のようにわかりやすく書けている自信はない。だけど、感動したことだけは伝わってくれると嬉しい。
漫画原作でハマっていた人は、映画を観て泣いたと思う。ブルージャイアントの魅力に再び気付いたはずだ。
映画で初めてブルージャイアントを知った人は、漫画原作が読みたくなったと思う。なんて素晴らしい作品なんだと。
そんな人たち全員に言いたい。
「小説『ピアノマン』を読まないとブルージャイアントは完成しない。真っ直ぐな勢いで走り続ける漫画コミック。無理だと言われた映像化を期待値を超えるクオリティで実現した映画。繊細で緻密な構成で人々を魅了させる小説。この宮本大・玉田俊二・沢辺雪祈を表したかのような三作品を全部味わった時こそ本物の “ジャス” の音が鳴り響くだろう——。」
とにかく、四の五の言わず読んでみてくれ。
おまけ:2023年度にやりたいこと・いま考えていること
表では言えない、最近考えていることを幾つか書いてみます。
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