「可能性のノスタルジー」、心に潜む甘美な余韻を呼び起こす本 『赤いモレスキンの女』
人生が交わることのない相手。そんな人に、特別な感情を抱いたことはありますか?現実には起こらない、起こることを望んでもいない。しかし、起こり得たかもしれない世界をすぐ隣に感じる、感覚。
うんと前のこと。朝の通勤途中、決まった時間、最寄駅近くの同じような場所で、毎朝すれ違う人がいました。
毎日のようにすれ違っていると、その人は「時計」のような存在になりました。今日はこの辺ですれ違ったから、定刻通り。改札付近ですれ違うときは、とても余裕がある時。逆に、家から遠くない場所ですれ違