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【創作童話】あわてんぼう うさぎ
森に、たいへんなあわてんぼううさぎがいました。なまえはピョンタというのですが、あまりあわてるので、
「あわてんぼううさぎ」
と、森のどうぶつたちはよんでいました。
ある日、ピョンタに電話がかかってきました。
それは、りすのガブリエルからの電話でした。
「もしもし、あわてんぼううさぎくんかい?」
「どうしたんだい、ガブリエル?」
「ロレンツォがね、石がき、作るんだってさ。それでさ、石やさんまで行って、いい石があったんだけど重くてもちきれないから、きみ、手伝ってくれないかってさ」
ロレンツォというのは、さるのなまえです。
ところが、ピョンタはあわてんぼううさぎなので、聞きまちがえてしまいました。
「ロレンツォが木から落ちて、石やさんの石であたまを打った」
と、聞こえたのです。
ピョンタは、さっそくみんなに電話をかけました。
ねずみのジュリアやきつねのリカルド、そして森じゅうのみんなに電話をかけました。
森のみんなは、大さわぎ。木の実やくだものなどをいろいろさがして、ロレンツォのお見まいに行きましたが…。
ロレンツォは、みんなを見て、
「あれっ?」
と、ふしぎそうに聞きました。
「きみたち、なにしてるの? そんなものをもって」
ロレンツォに言われて、みんなはピョンタの方をじろりと見ました。どうやら、あわてんぼううさぎのピョンタが聞きまちがえてしまったようです。
ピョンタは、はずかしくなってピョンピョンとはね、すたこらさっさと森の方へにげて行ってしまいました。
ロレンツォの話を聞いて、みんなはわらいだしました。だって、また、あのピョンタがあわてたのですから。
森のみんなは、自分たちがもってきたたべものを出して、たべたり、うたったりして、仲よくあそびました。
ところが、ピョンタはしょんぼり。
だって、いつもこうなんです。
ピョンタは、いつも失敗ばかりするので、とてもかなしくなりました。
だけど、
「こんどこそまちがえないぞ」
と、心に決めました。
つぎ日のあさ。
ピョンタの家のまえで、さるのロレンツォと、ねずみのジュリアと、くまのアンドレアがこんな話をしていました。
「うさぎって耳がながいのに、どうして聞きまちがいをするのかな?」
と、ジュリアが言うと、
「ほんと、ほんと、うさぎのピョンタは、どうしてあんなにあわてるんだろう」
と、ロレンツォが言いました。
さいごに、くまのアンドレアも
「ほんと、ほんと」
と、言いました。
ピョンタは聞きまちがいをしなかったでしょうか?
いいえ、また聞きまちがえてしまったのです。
ピョンタには、
「うさぎのアルバが耳にケガをした」
と、聞こえたのです。
でも、こんどはみんなに電話をかけず、自分で木の実やくだものをさがして、はこの中に入れて、ふたをして、リボンをかけました。
そして…
さっそく出かけて行きました。
しばらく行くと、あとからみんなもやってきています。
そこで、ピョンタはやっと気がつきました。今日はアルバの誕生日だったのです。
こんなときのために、ピョンタは洋服を用意していました。そこで、ものすごいはやさで、家まで洋服をとりにかえりました。
そして、みんながアルバの家に入っているころには、ピョンタはもう洋服をきて、いちばんうしろにならんでいました。
お誕生日会がはじまりました。
みんなは声をそろえて、
「お誕生日、おめでとう」
と、大きな声で言いました。
それから、プレゼントをうさぎのアルバの前にさしだしました。
うさぎのアルバは、
「ありがとう」
と言いました。
そして、みんなでケーキをたべたり、くだものをたべたりしました。
やがて、たのしい誕生日会がおわりました。
みんなは、
「さようなら」
と言うと、それぞれ自分の家へかえって行きました。
家へかえる途中、ピョンタの耳がなんだかへんでした。ピョンタが耳の中に指を入れてみると、耳からへんな虫が出てきました。
すると、みんながあつまってきて、のぞきこみました。
「あ、これは、聞きちがい虫だよ」
と、くまのアンドレアが言いました。
「そうか、聞きちがい虫のせいで、ピョンタは聞きまちがえをしていたんだね」
みんなが言うと、ピョンタは手の中の聞きちがい虫を見ながら、
「それじゃあ、ぼく、もうこれであわてんぼうじゃなくなるね」
と、ピョンタがうれしそうな顔で言うと、みんなはいっせいにわらいました。
こうして、ピョンタは二度とみんなの話を聞きまちがえることはなくなりました。
〜おしまい〜
* * *
今回は、「ウミネコ文庫」さんの企画に参加してみました。
↓
エッセイでも、語学でも、旅行でもない、今回の「創作童話」。
そもそも私のジャンルに何ひとつ引っかかることのないお題に参加することになったのは、敬愛するジェーンさんからのご紹介によるものでした。
クリエイターフェスへのお誘いなのかしら?と思ってお尋ねしたら、「ウミネコ文庫」さんの企画へのお誘いでした。
私自身があわてんぼうでした。
ほかならぬジェーンさんからのお誘いです。しかも、そのためにご自身の投稿日を締切日よりずっと早めてくださったのです。(ことの経緯はコメント欄をご覧ください。)
これは、お断りするわけには参りません。
とは言うものの、創作などサクサクできるものではありません。ましてや童話など、自分自身が童心に帰るために、一体どれだけ時間を巻き戻せばよいのでしょうか。
その時、突然思い出したのが、昨年実家に帰った時に見つけた子ども時代の作品でした。思えば、子どもの頃はよく物語やなんかを挿絵つきで書いたもので、この作品もそうした『我楽多文庫』のブリキの中に入っていたのでした。裏書を見ると、小学二年生の夏休みの作品だそうです。
面白いのは、登場人物たちの名前が、主人公のうさぎを除いて、みんな外国の名前だということでした。あまりにもミラクルな名前がつけられていて、大人になった私にはとても覚えきれなかったので、今回大幅に改名をすることにしました。
では、うさぎのピョンタはこのままでいいのか、という話ですが、ポター女史のピーターラビットに似ているという理由から、このままでよいことにしました。というより、もうこれ以上名前が思いつきませんでした。
むしろ、この際、登場人物すべての名前を皆さまから募集したいくらいです。
(10/4にフランス名からイタリア名へ変更してみました。)
先着50名様とのことでしたので、とり急ぎ参加させていただきました。
<ウミネコ文庫さまへ>
文中のフリガナは、当時の私がひらがなで書いていたのを、読みやすさのために漢字に修正した箇所です。必要かどうかのご判断は、「ウミネコ文庫」さまへ一任いたします。
<ジェーンさんへ>
今回の無茶ぶり、あまりにも鮮やかなノールックパスであったため、勢いで受け止めてしまいました。思えば、ジェーンさんとの出会いは、1年程前の『トップガン』。
未読の方のために、詳細はお話ししませんが、私はこの記事を読み、なんて愉快なお話だろうと笑っていました。そこで、すでに常連の皆さま方で賑わっているコメント欄へ恐る恐るはじめてコメントをしようとしたその時、私は気づいてしまったのです。私もまたジェーンさんと同じミスをしていたことに!
毎晩『トップガン』のサントラを聞いていたため、いつのまにかKenny Logginsの『デインジャーゾーン』が流れると、トム・クルーズのあの笑顔が瞬時に浮かぶようになっていたのです。それはほとんどパブロフの犬と同じでした。
こうしてジェーンさんとのお付き合いが始まり、今日にいたります。
今回の企画への思いがけないお誘い、ありがとうございました。
さて、ここで私からジェーンさんへの無茶ぶりです。どうかこの作品に挿絵を提供してください。
……というわけで、ジェーン画伯による傑作(トップ画)をいただきました。
ジェーンさん、ありがとうございました!
こんなわけで、連日の投稿となってしまったのですが、慣れない早書きに力尽きてしまいました。
本日、まだ月曜日…。
皆さま、今日もよい一日をお過ごしください。
Ryé