- IPO準備の内部統制 _ Part.01_内部統制体制構築は外せない-
IPO(上場)準備にあたって、内部統制の構築は外せないものです。
ただ、意外にも
「なぜ内部統制をしなきゃいけないの?」
「どの程度の準備が必要なの?」
この理解が浸透していません。
ここでは、IPO準備で「なぜ、内部統制の構築が外せないものなのか?」を、数回に分けて説明します。
(*約5分程度でお読みいただけます。)
内部統制とは? なぜ内部統制の構築は必要なの?
内部統制(Internal Control)とは、「業務の適正を確保する体制」です。
" 統制 " という言葉だけをみると「コーポレート・ガバナンス(企業統治または企業統制)と関連付けて説明されることが多いのですが、広義では関連しているものの、狭義では別モノです。それぞれわけて考え、理解したほうが良いかと思います。
英語でみると " Internal Control " といい、何を " Control " するのかがわかれば、別モノであることがよくわかります。
内部統制がコントロールする対象は、
企業の「組織統治」、「リスク低減」(*削減、ゼロではないことにご注意ください。)「財務報告への説明責任」です。これらを証明するのが、内部統制の評価(監査)となります。
組織統治:組織内で行われる重要な決定および活動による影響に対して、企業がどのような仕組みで、どのように責任を持って判断し、組織全体で社会的責任を果たしていくための体制。
リスク低減:企業を取り巻くリスクおよび企業内に存在するリスクに対し、企業がそれを許容可能な水準に低減し、健全な意思決定をもって社会的責任を果たしていくための仕組み。
財務報告への説明責任:責任ある組織統治、健全な意思決定によるリスク低減の結果、ステークホルダーおよび社会に対して信頼ある財務報告を説明する責任。
組織統治は、上場企業だけでなくどの企業でもその重要性を知り、しっかりとした体制を作っていると思います。ただし、ここで言う組織統治は「組織全体で社会的責任を果たす」という要素が加わっております。なぜなら、上場企業には財務報告(企業の財務状況、財務諸表の報告とその説明)が信頼性あるものとして証明・説明する責任があること。また、これを適時に開示する義務があるためです。この説明と義務を社会的責任なのです。
リスク低減も同様、どの企業もその重要性を知り、対策を講じていると思います。ただし、ここで言うリスク低減は「企業を取り巻くリスクの把握と精査・検討」「許容可能な水準へのコントロール」、これに「社会的責任を果たす」という要素が加わっております。
なぜなら、上場企業はこれについても財務報告についての説明責任の一つの項目として、有価証券報告書の記載事項に「事業の状況」に「事業等のリスク」が入っています。ここで企業は、様々なリスクを把握し精査・検討していること、様々なリスクが事業に重大な影響を及ぼさないよう対策を講じてコントロールしていること、これを公(社会)に開示するなどして説明する責任を果たしていることが求められるのです。
財務報告への説明責任は前述のリスク低減の続きで、公に開示された有価証券報告書、株主総会の招集通知など適時開示にあたる情報などは、株主を含む株式市場の取引の重要な判断材料になります。そのため、財務報告を適正に説明する責任があるのです。
このようにみると、内部統制を構築する目的や、特にIPO準備の際の重要な準備の要素になっているか、など、内部統制の概要がご理解いただけるかと思います。
内部統制はどれくらい重要なのか?
内部統制はどれくらい重要なのか?は、前述の続きをもう少し深めに説明します。
上場企業にとって(有価証券報告書の提出会社にとって)、自社の内部統制について説明する機会は、年に1回の有価証券報告書提出の時だけです。しかしこの「年に1回」は株主を含む株式市場とって重要なのです。「企業価値 = 取引されている株式の価値」を証明するものだからです。
また、有価証券報告書の記載事項には
「企業概況」(経営指標、事業の内容、従業員の状況など)
「事業の状況」(経営方針、経営環境、事業等のリスク、財務状況、キャッシュフロー分析など)
「設備の状況」(設備投資の概要、状況、新設など)
「提出会社の状況」(株式等の状況、配当政策、役員の状況など)
「コーポレート・ガバナンスの状況等」(コーポレート・ガバナンスの状況、監査報酬の内容など)
「経理の状況」(連結財務諸表、比較情報、会計方針など)の記載事項(*詳細は金融庁サイト参照)
これらの記載義務が定められておりますが、これらすべて内部統制の評価(監査)の対象となっております。結局のところ、内部統制の体制を構築し、内部統制の評価を適正に実施しないと、有価証券報告書が作成できません。加えて、この有価証券報告書と合わせて「内部統制報告書」を金融庁に提出すること、さらにこの内部統制報告書は「公認会計士等による監査を受けること」(日本公認会計士協会サイト「内部統制報告制度」参照)となっていますので、雑な体制構築ができない、ということになるのです。
前述のとおり、上場企業(有価証券報告書の提出会社)は、内部統制報告書を提出する義務があります。内容としては、「内部統制の基本的枠組みに関する事項」「評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項」「評価結果に関する事項」などを記載することになっており、まさに「どのように内部統制を構築したのか」をすべて説明しているものになっています。
ちなみに、内部統制報告書の記載事項と、「有価証券報告書と合わせて内閣総理大臣(金融庁)に提出」することは、金融商品取引法に定められていますので、意義としてはコンプライアンスの側面もあることにご注意ください。
IPO準備にあたっての内部統制の必要性を、ご理解いただけたでしょうか。難しさを感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、難しくはありません。 なぜなら、上場企業はどこでも構築していますし、「サイズの合った洋服を着る」ようにサイズの合った内部統制を構築することを身に付ければよいだけです。
その方法とは・・・次回説明します。
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