私はまだ本気の恋を知らない

読み終わった後に手放さず、手元に置いておきたいと思う本は実はなかなか出会えない。それがこの本はもう一目見て気に入ってしまって、何かある度に好きなところをいつもパラパラとめくっています。

「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」は、尾形さんがコピーライターということもあって、重たくないけれど、ふんわりとすっと心に残る表現がたくさんあります。様々な女性が日常で思うちょっとした小さな気持ちの動きを1件のセレクトショップでお洋服を買うという行為から素敵に短編で描かれています。

色々な登場人物の女性の恋模様を読んでいくうちに私はまだ多分本気の恋はしたことがないことに気付きました。もちろん、少ないながらもお付き合いはしたことありますし、片思いも失恋もしました。でも、多分この本に出てくるようなこちらが照れ臭く歯痒くなるようなキュンとする恋ではなかったと思います。コンプレックスを好きさせてくれた恋、不倫をしてでも手に入れたい恋、可愛く素直になれなかった恋、一人一人に色々な形があるけれど、どれも変わらない「恋」。本の感想としてはありふれた言い方ですが、読んだら間違いなく「本気の恋」したくなります。そして、きっと鏡の前でその時に着るお洋服を選びたくなるはず。

この本では、ルミネのキャッチコピーから出来た小説なので、女性の恋とお洋服の2つがキーポイントになっていています。よく男性は女性のヘアスタイルやネイルが変わったことに気付かないし、気が利かないなんて言いますが、男性の皆さま、女性は、こんな思いであなたに会う時にお洋服を選んでているんですよ、と言いたいです。(これは男女関係なく言えることですが、この小説では女性目線ですので)「何で気付いてくれないの?」と責めるつもりはありませんが、服にはその時の彼に対する思いや女性自身の仕事や生活など全てが籠っているということは知っていて欲しいのです。女性が服を選ぶ行為は自分に恋出来るように、彼に恋してもらえるように、明日が素敵な1日になるように恋焦がれているからなんです。そういった意味でも男性にも読んでいただけたら面白いと思いますし、ぜひ男性の感想を聞いてみたいと思っています。

私は「本気の恋」はまだ見つからないけれど、お洋服を選ぶ時にはきっとこの言葉を思い出します。

あしたの服を悩むのは、あしたに夢見るからなんだ。

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