ざらざら、すべすべ、さらさら。今日はどの本の気分?
"今月買おう"と決めていた、江國香織さんの「読んでばっか」を無事に手にして、読み進めている今日この頃。
巻頭に、雑誌「すばる」に掲載されたアンケート"どうやって本を読んでいますか"に対する江國さんの回答が記されているのですが、一問目から、"良いなぁ"と思ってしまいました。
読んでいて、深くうなずける文章。"わたしも、同じだなぁ"と思い、うれしくなります。
この文章を読んでいて、本を選ぶとき、"紙の手ざわり"も、わたしにとって大事な基準なのかもしれない、ということに思いいたりました。
どうやらわたしは、"つるん"とした感触にはあまり心を惹かれないみたいなのです。
手に取って、良いなぁ、と感じるのは、ざらざらしていたり、すこしマットな感触だったりするもの。
自宅にある本の中から選ぶと…
"本は手に持って読むもの"ということをあらためて意識することってあまりないのですが、無意識に手にふれたときに心地良いものを選んでいるのかな?なんて思います。
紙の手ざわり、と同じくらい大事なのが佇まい。
佇まいの美しさは、ことばにするのが難しいものではあるのですけれど、先日、島田潤一郎さんの「古くてあたらしい仕事」を読んでいて思ったのは、本の作り手の美意識が、本そのものの佇まいに影響するのではないか、ということです。
装丁家の和田誠さんの仕事に対する、敬意に満ちた一連の文章は、この本の中でも特に好きな部分です。
たしかに、カバー本体にバーコードの無い本は美しい。
めったに出会えないのですが、そのぶん、出会えたときはうれしくなってしまいます。
バーコードもですが、本の帯も、個人的にはあまり好きになれません。
帯の色が原色だったり、惹句が大きな字で記されていると、本の装丁の良さを損なってしまっているように感じられるときがあって…。
最近は帯ありきの表紙デザインのものも多いのですが、
昔はせっかくの素敵な写真や装画が帯で隠れてしまっていた本が多かったように思います。
そんな中で秀逸だと思ったのが、鈴木成一デザイン室が手がけた、森博嗣さんの「スカイ・クロラ」シリーズの単行本の装丁。
本体には一面、空の写真があしらわれています。透明なカバーには題名と、文章の一節、バーコードが印刷されていて…、と思いきや、鈴木成一さんいわく、これはカバーではなくて、透明な帯だとのこと。
つまり、帯を取ってしまえば、本体には背表紙に題名と著者名しか印刷されていない状態になるのですね。
(本を手放してしまったので、写真が載せられないのが残念です。ちなみに、「ダウン・ツ・ヘヴン」の空の色がとても好き)
物語そのものがたたえている静謐さに、とても似つかわしい装丁だと感じたのを、今でも忘れられません。
手ざわり、佇まい、そしてもうひとつ…。
わたしが心惹かれるのは、書体、です。
株式会社精興社の、「精興社タイプ」とよばれる書体が好きで、本屋さんでぱらぱらとページをめくった本の中にこの書体を見つけると、うれしくなります
ひらがなの独特な曲線が味わい深くて、わたしの好きな作家の方(堀江敏幸さん、川上弘美さん、吉田篤弘さんなどなど)の本はこの書体であることが多く、不思議とその作品の雰囲気によくなじんでいるように思えるのです。
(ちなみに、先に引用した二冊の本も、「精興社タイプ」です)
こうしてみると、ひとことで"好きな本"といっても、その内容以外にも、一冊の本の中に、いろいろな"好き"の要素が満ちているのだなぁ、と感じます。
美しい表紙をながめる楽しさ、手でふれたときの心地よさ、ページをめくるときのかすかな音、ふとしたきに鼻先をかすめる紙の匂い。
こうしてみると、本を読むことって、さまざまな感覚をつかうことでもあるのですね。
雨の日には、いつもより感覚が冴えるように思います。
そういう意味では、今日は良い読書日和。
さて、今からどの本を読もうかな?
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