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ショートショート(変客ポスト)
とある図書館。
カウンターに猛然とかけこんでくる、一人の利用者。
利用者:すいません!さっき図書館の入口にある返却ポストに、人が吸い込まれたのを見たんですけど!
図書館員:あー、よくあることなんですよ。
利用者:えっ、どういうことですか?
図書館員:あのポストは「変客ポスト」でもありますからね。
利用者:「へんきゃくポスト」って、本を返却するポストなんじゃ…?
図書館員:あのポスト、役割が2つあるんです。1つは「返却」、そしてもう1つは「変客」のほうです。
利用者:「変客」?
図書館員:そうです。多いんですよね、最近。当たり前のように返却期限を守らなかったり、本のページを破ったり、外したり、シミをつけたり、水濡れさせたりする「変わった利用者」が。そういう利用者たちが持ち込むワケありの本をポストに返却しようとすると、ポストが即座に感知して、ペナルティを与えるために利用者ごと、中に吸い込んじゃうんです。
利用者:そ、そんな…。ちなみに、ペナルティって…?
図書館員:当然、変客にはそれなりの罰を受けてもらいます。吸い込まれた先は、もう修理ができないほど悲惨な状態になって、図書館に復帰できなくなった「本の生霊たちの住む世界」が広がっていて、そこで一定期間、それらの本たちと生活を共にしてもらいます。変客にとっては苦行ですね。まれに変客がこっちの世界に戻ってこれないケースもありますが…。
利用者:本の生霊だなんて…。そんなの信じられない!
図書館員:本も生き物なんです。本が持つ恨みって、それはそれは恐ろしいものでね…。まあでも、借りた本を返却期限内にかつ、元々の状態でお返しいただければ、なんの問題もありませんから。
利用者:あの…。私が今借りている本、誤って破いてしまったページがあるんですけど、ポストじゃなくて、このカウンターでお返しする分には、そういう世界に連れていかれたりしませんよね…?
図書館員:このカウンターね、「返却カウンター」でもあり、「変客カウンター」でもあるんですよ。
利用者:えっ!!
図書館員:このバーコードリーダーであなたを吸い込んであげますね。
利用者:キャーッ!!
【最後まで読んでいただいてありがとうございます。るお】
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