法の下に生きる人間〈第90日〉
本シリーズもいよいよ、残すところ10回となった。第91〜95日は3月4日〜8日、第96〜100日(最終回)は3月25日〜29日に連載する。
今週は、民法上の「親族」から婚姻について話を広げ、同性婚からマイノリティーの社会的立場にまで言及してきた。
結局のところ、私たち人間は、自分自身や自分の身近な人がマイノリティー的な存在にならないと、社会的弱者の置かれた状況を身をもって理解できないのである。
不慮の事故に見舞われて初めて車椅子生活の大変さが分かる、親が認知症になって初めて介護のしんどさが分かる。
でも、そういう人たちは、マイノリティーなのである。
今、65才以上の高齢者は日本の人口の30%に達しており、第二次ベビーブームといわれた1971年から1974年生まれの人が65才以上になるのが2040年代である。
そのときには、35%が65才以上の高齢者になると推計されている。つまり、確実に3人に1人は60代以上の世の中になる。
そして、来年(2025年)には、65才以上の高齢者の約5人に1人が認知症になる見込みだというデータも、すでに厚労省が発表している。
そんな世の中が目前に迫っていることが分かっているのだから、国や自治体も、さまざまな喫緊の課題がある中で、優先順位をつけて対応せざるを得ない。
子育てに関する施策が充実している自治体は、なぜそれが可能なのか考えたことがあるだろうか。
同じく厚労省の調査では、昨年7月に推計結果が公表されているが、今、子育て世帯数は990万ほどであり、昔より減ってきて初めて2割(=20%)を切ったという。
このデータは世帯数でカウントしているため、単純な比較はできないが、65才以上の高齢者の割合が子育て世帯数より多く、その高齢者の多くが元気であって、選挙のときも積極的に投票に行っているとしよう。
子育て世帯の人が国政選挙(つまり衆参両議院の議員選挙)のときに、どれだけ投票に行っているかで、結果は変わってくる。
高齢者ウケする公約を強調するのか、子育て世帯ウケする公約を強調するのか、立候補する議員も彼らを支持する政党も、有権者の人数やターゲットにする人たちの割合、過去の投票率をもとに判断しているはずである。
さて、厚労省は、2040年には800万〜950万人が認知症高齢者になる見込みだとする推計データも出している。
子育て世帯数が990万からこのまま減少していくと、ぞっとする世の中になりそうな予感がしないだろうか。
すでに無人機(=ドローン)による戦争が、現実にロシアとウクライナで起きている。
能登半島地震の被災者への物資支援にもドローンが使われている。
ドローンの規制に関する法整備はある程度できているが、では、そのドローンによる攻撃に対処できる人材が日本にいるか、あるいはドローンの操作スキルを有する人材がいるか、介護現場の人材難の課題はどうするか。
日本はどこにお金をかけないといけないか、そのためにはどこからの支持を取り付けて、政策を進めていかないといけないか、なんとなく見えてきただろうか。
でも、私たちの多くは、目先の暮らしを良くすることを第一に要求しているのだ。