法の下に生きる人間〈第3日〉
第二次世界大戦で、日本国民が敗戦を知らされたのは、昭和天皇の玉音放送が流れたラジオからであった。
昭和天皇の肉声をじかに耳にした多くの国民は、地面に伏して涙を流したという。
その後、多くの軍人や、東條英機元総理などが戦争犯罪人として処罰を受け、死刑で亡くなったのだが、昭和天皇は退位せずにとどまり、罰せられることもなかった。
そして、今の若い人たちは知らないであろうが、63年間も在位していたのである。
平成元年が昭和64年、令和元年が平成31年だったことを考えると、昭和天皇がいかに激動の半生を生きられたかがお分かりだろう。
1901年4月29日(今では昭和の日)に生まれた天皇は、まさに20世紀の1年目にこの世に生を受け、1989年1月7日に87才で亡くなられた。
1月7日は、当時は土曜日であり、私が通っていた学校は急きょ休校となり、街なかの照明は落とされて薄暗かったのを、今でも鮮明に覚えている。
日本国憲法の第2章は「戦争の放棄」が謳われた第9条で構成されていることは、昨日の記事で触れたとおりである。
第1章は、第1条から第8条まであるが、それは「天皇」の章になっている。
実は、日本国憲法の前の明治憲法にも、第1章は天皇について第17条まで条文が記載されている。
そのうち、第3条と第11条と第13条を、以下に挙げてみよう。
【第3条】天皇ハ神聖(しんせい)ニシテ侵ス(おかす)ヘカラス(べからず)
【第11条】 天皇ハ陸海軍ヲ統帥(とうすい)ス
【第13条】天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般(しょはん)ノ条約ヲ締結(ていけつ)ス
驚くべきことに、天皇の神格化、陸海軍の統帥権、宣戦布告に講和に条約締結権が認められていたのである。
この明治憲法は、1889年2月11日(今では建国記念の日)に発布され、現行憲法が公布されるまで、57年余りも国民の生活に影響を与えた。
それよりも20年長く受け継がれてきた現行憲法において、「天皇」は、どのような存在として位置づけられたのだろうか。
そして、私たちにとって、天皇とはどのような関係があるのだろうか。
明日は、この点について、現行憲法の条文で確認してみよう。