唱歌の架け橋(第10回)

大空を自由に飛び回る鳥は、いつの時代の子どもであっても、憧れの的(まと)ではないだろうか。

私たち大人が子どもだったときもそうだったが、物心がつく頃の幼い子は、初めて見る鳥に指差しをして驚いたり、興味津々で近づいたりする。

ハトやスズメ、ツバメやカラスなどは身近な存在であり、すぐに目に留まりやすいが、はるか高い頭上を飛ぶ鳥となると、珍しさのあまり、ずっと空を見上げてその動きを目で追っている子どももいる。

その鳥は、同じところをグルグル回って飛んでいるから、目で追うのもそんなに疲れない。

そう、その鳥の名は「とんび」である。

【1番】
とべとべとんび    空高く
鳴け鳴けとんび    青空に
ピンヨロー    ピンヨロー
ピンヨロー    ピンヨロー
楽しげに    輪をかいて

【2番】
とぶとぶとんび    空高く
鳴く鳴くとんび    青空に
ピンヨロー    ピンヨロー
ピンヨロー    ピンヨロー
楽しげに    輪をかいて

以上である。

この歌の題名は『とんび』であり、1918年(=大正7年)に、葛原しげるが作詞、梁田貞(やなだ・ただし)が作曲したものである。

歌詞を比べてみると、1番と2番は、命令口調であるかないかだけで、ほとんど変わらない。

ただ、この歌の魅力というのは、とんびの自由さを表現している曲の旋律にあると言って良いだろう。

子どももついついこの伸びやかなメロディーに乗せられて、楽しく歌ってしまうような工夫がなされている。

ハ長調であるが、低音のドから高音のドまで、ちょうど1オクターブの音域で、なだらかな斜面を上り下りするようなメロディーの山が繰り返されている。

ドーレミソラソドーラー
ソーミラソミドレー
ドーレミソラソドーラー
ソーミラソレミドー
ドーソソー
ラーミミー
ドーソソー
ラーミミー
ドーレミソラソドー
ドーラソミレミドー

ところで、この歌には、擬音語が入っていることにも気づいただろうか。

これまで紹介してきた歌の歌詞には、カタカナで表記されるような擬音語は入っていない。

『春の小川』の「さらさら」というのは、擬音語というよりは擬態語(=どんな流れ方をしているのか)に分類されるのではないかと私は思っている。

これは、平安時代の短歌にはなかった表現である。

擬音語や擬態語は、いわゆるオノマトペのことだが、実は、オノマトペの歴史は、古代の文献である『古事記』にまでさかのぼる。

ちょっと脱線してしまったが、子ども向けの唱歌には、こういったオノマトペも取り入れられるようになる。

次回は、7月1週目の月曜日(7月1日)に予定しているが、いろいろな視点で引き続き唱歌を取り上げていきたいと思う。

1週間、お疲れ様でした。





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