20世紀の歴史と文学(1957年)
今日は、文学の話にしよう。
本シリーズの1955年の回で触れたとおり、今日は、芥川賞受賞作が発表された日である。
朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』
松永K三蔵『バリ山行』
上記2作品が芥川賞に選ばれたので、興味のある方は読んでみると良いだろう。
さて、1957年も、3人の作家の小説が発表されている。
松本清張『点と線』、井上靖『天平の甍』、大江健三郎『死者の奢り』である。
この年、松本清張は48才、井上靖は50才なのだが、大江健三郎はまだ22才だった。
大江健三郎は、翌年に『飼育』という短編小説で芥川賞を受賞した。
井上靖も1950年に『闘牛』で、松本清張も1952年に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞している。
だが、井上靖や松本清張が40代で受賞しているのを、大江健三郎が23才で受賞したのはラッキーなのだろう。
『太陽の季節』で芥川賞を受賞した石原慎太郎も、同じ23才で受賞した。
石原慎太郎は、2022年に89才で亡くなり、大江健三郎も翌2023年に88才で亡くなった。
井上靖や松本清張も、80代前半まで長生きした。井上靖は1991年に83才で、松本清張は翌1992年に82才で亡くなった。
石原慎太郎と大江健三郎、井上靖と松本清張が、それぞれ1年違い、1才差で亡くなっているのは、偶然にしてはすごいことである。
今日、取り上げた『太陽の季節』『点と線』『或る「小倉日記」伝』『天平の甍』『闘牛』『死者の奢り』『飼育』の7作品と、『サンショウウオの四十九日』『バリ山行』の2作品を読み比べるのも良いだろう。
ちょっとだけ解説するなら、井上靖の『天平の甍』は遣唐使が登場している。大江健三郎の『死者の奢り』は、女子学生が妊娠中絶の費用をアルバイトで稼ごうとしている場面がある。
松本清張の『点と線』は、東京駅の13番線ホームから15番線ホームが見通せるかという「空白の4分間」が、テレビドラマとして放映されたときも話題になった。
67年前の日本は、どんな時代だったのかを知るには、当時の有名な作家の小説を読むだけでも、学ぶことがたくさんある。
今日、受賞が決定した朝比奈さんと松永さんの作品も、どのように日常が描かれているかに注目すると、昭和の時代との違いのおもしろさにも気づくだろう。
最後に、1957年は、岸信介(のぶすけ)が内閣総理大臣になった年でもある。
今は亡き安倍元総理の祖父である。
安保闘争が起こっても、安保改定に踏み切ったのが、1960年まで総理大臣を続けた岸信介だった。
この時代に生きた作家たちは、どのような思いで小説を書いていたのだろう。
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