20世紀の歴史と文学(1990年)

いよいよ20世紀最後の10年、90年代に突入である。

この年のビッグイベントといえば、なんといっても東西ドイツの統一である。

10月3日、統一記念式典が開催され、第二次世界大戦後ずっと分断が続いていた東ドイツと西ドイツが再び合体した。

1949年以来、実に41年ぶりに、東ドイツが西ドイツに編入される形で統一が実現した。

ドイツの統一に先立って、2月と3月には、バルト三国が相次いでソ連から独立宣言をした。

バルト三国とは、ラトビア・リトアニア・エストニアであり、3国ともバルト海に西側で接しており、海沿いの風景は美しい。

このバルト三国は、2004年になってNATOにそろって加盟した。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、昨年にフィンランド、今年2月にはスウェーデンがNATOに加盟した。

90年代に入る前のソ連の影響力の大きさを考えると、今のロシアが西側諸国の脅威をだんだんと強く感じるようになったのも無理はないだろう。

元はソ連の一部だったウクライナがあのように侵攻されたら、北欧をはじめバルト三国も、虎の威を借る狐じゃないが、アメリカをはじめとするNATOをバックにつけて防衛態勢を強化するのも当然の成り行きである。

さて、世界情勢が混沌としている中で、1990年8月の初旬に、イラクがクウェートに侵攻した。

いわゆる湾岸危機である。

すでに本シリーズで解説したとおり、イラクの大統領はサダム・フセインだった。

クウェートを自国に併合することが目的で侵攻したのだが、国際社会はこれを一斉に非難した。

思い出してほしいのは、1980年から1988年まで続いていたイラン・イラク戦争である。

最終的に両国は停戦を実現したものの、2年後にまたイラクは戦争を仕掛けたのである。

これが翌年の湾岸戦争に発展し、多国籍軍の集中攻撃をイラクは受けることになるのだが、イラン・イラク戦争でアメリカはどっちを支援していたか、明日の1991年の回を読む前に振り返っておいてほしい。

ソ連は、バルト三国の独立宣言などで解体が徐々に進む中で、ゴルバチョフが大統領に就任した。

10月には、ゴルバチョフ自身がノーベル平和賞にも選ばれた。

そして、日本はといえば、11月にバブル景気の崩壊が始まったのである。

日経平均株価は、2万3000円台にまで下落し続けていた。

2021年に、日経平均株価が30年半ぶりに3万円台に回復したというビッグニュースがあったが、それぐらい景気低迷のインパクトは大きかった。

だが、当時の人たちが、景気がおかしくなっていることを実感するには、もうしばらく時間が必要だった。





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