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読んだ小説を褒めながら紹介するnote 〜『推しが俺を好きかもしれない』篇〜

 この『読んだ小説を褒めながら紹介するnote』シリーズでは非常に珍しいことに、リリースから日が浅い作品のご紹介となります。

まずは書影と、軽い紹介。

\どーん/

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 主人公の「推し」である少女を描くは館田ダン先生
 著者である川田戯曲先生は、本作が『嘘嘘嘘、でも愛してる』シリーズに続くファンタジア文庫2シリーズ目となります。


『推しが俺を好きかもしれない』 #とは

 主人公・夜宮光助《よみや・こうすけ》は拗らせ系限界オタクな高校1年生。
 2次元コンテンツを愛して止まない彼が最近推しているのは、ネットで活動している音楽ユニット『満月の夜に咲きたい』と、そのボーカルを務める U-ka(ユーカ)という名前の女の子。

 作中でも出てきますが、現実世界で言うところでは「ヨルシカ」であったり「ずっと真夜中でいいのに。」であったり「YOASOBI」であったりと、いわゆる『夜好性』タイプのユニットですね。ボカロPに女歌い手が組み合わさるアレです。……あ、夜宮光助の名前も「やこう性」ですね。今気付きました。

 2次元ヲタの彼は元々当該グループのコンポーザー(いわゆる『ボカロP』とされる人)を好きだったので、時たま居る「またボカロPがボカロを捨てたのか」という発想に至りかけたものの、U-ka の魅力に一瞬で虜になり、結局ちょっとイタいブログを運営するなど無事にユニットのファンになったのですが。

 ある日のこと。
 この『満月の夜に咲きたい』が顔出し配信放送を行うということで、当然のように視聴する光助。
 ところが、彼の目に映った U-ka は、学校一カワイイとされる同じクラスの花房憂花《はなぶさ・ゆうか》だったからビックリ。

 翌日、クラスメイトを含めた生徒達は憂花の元に集まって、ちやほやしてるわけですが、限界オタクな彼はそうしません。
 陰キャだからですか?
 ――――否!
 彼には「推しのプライベートにファンは干渉するべからず」という信念があるから。
 ただ、ファンであることに違いはなく、光助は深夜テンションで書き上げたファンレターを彼女の机に突っ込んでおいたりはしました。


 それからさらに数日が経ちまして。
 事件が起きます。

 日直当番としてゴミ出しをしようと校舎裏に向かった光助の目に飛び込んできたのは、憂花がイケメン先輩に呼び出されて告白をされている様子
 どうするのだろうかと影から覗きをしていれば、告白に対してごめんなさいをする憂花。
 ざまあみろイケメン! と限界オタク丸出しな心境になっていた光助だったものの——。

「なに? 自分がちょっと有名人だからって、調子乗ってるわけ?」

 フられた直後、逆ギレするイケメン先輩。
 そして、黙する憂花。
 俺の推しに何てこと言いやがる、デスノートを手に入れたら覚悟しておけ、などと思う光助。

 大丈夫だろうか、傷ついていないだろうかと光助は心配しますが、さらにその視界に飛び込んできたのは————。

家に帰ったらプリン食べるなどと言い放ちながら、近場にあったゴミ箱に蹴りを入れる憂花の姿が!!

 隠れてみていたのにも関わらず、その衝撃的な光景に思わず「何なんだあの女」と口走ってしまったが運の尽き。
 目ざとくその声の主である光助を捉えた憂花は、契約交渉という名の脅迫を始めます。
 当然、数日前にもらった『長ったらしくて読む気も失せるファンレター』の送り主が光助であることもばっちり把握済みで、それをしっかりと交渉材料に組み込んでいるあたり、相当な女です。

「うん、そうだよ。憂花ちゃん、普段はめちゃくちゃ猫被ってるの」
「な——」
「でも、少し考えてみなよ夜宮くん。こんだけ顔が可愛くて、こんなにプロポーションが抜群で、頭だって別に悪くない、それでいてとんでもなく歌が上手い女の子が——性格まで良い訳ないと思わない?」
「なああああああああああ!?」

 この世に聖人君子などいない!

 限界オタクは基本的に「女子」という存在に夢を見がちですが、この花房憂花、徹底的にオタクの夢をぶち壊しにかかります。
 哀れ、限界オタクである夜宮光助は、こともあろうに自分の推しにその夢をコテンパンにされてしまいましたとさ。

 ……一応、そのだんまりの報酬として渡すと言われた「『満月の夜に咲きたい』のデモ音源(初音ミク歌唱版)」の猛烈な魅力に折れた光助は、「『満月の夜に咲きたい』のボーカル・U-ka こと花房憂花は本性がアレなので猫を被っている」ことを他言しない旨を誓わされます。

 ま、ここまでならば、ただのカースト上位層の女子が下位層の男子をいたぶるだけのお話に見えなくもないのですが……。

 というのが、本作です。


推しポイントとか。

 要するに、振り回され系ラブコメです。
 なので、推しポイントは「ツンがデレかけるところ」です。
 ※タイトルほど「好きかもしれない」感を出してはくれません。素直じゃないのです、憂花姫は。

 悪夢のようなカミングアウトを推しからされた後、光助は体のイイ愚痴吐き捨て相手と狙いを定めたような憂花になぜかつきまとわれることになります。
 幽霊部員だらけの文芸部に所属する光助が部室で運営する『満月の夜に咲きたい』溺愛ブログの記事を書いていれば、そこにやってきたりするわけですよ。時々お菓子を持ち込んできたりしつつ(ただし、その菓子はすべて憂花の腹の中へ)巻き込まれていくわけですが。

 ただ、時に憂花的に格好悪いところ(自分のCDが売れていく様を見たい、とか、体育のバスケで足を引っ張ったと言われ悔しくてフリースローの練習をするとか)を見たとしても、「推しのプライベートにファンは干渉するべからず」のスタンスを変えず、わりとフラットに付き合う光助は、憂花にとっては有り難い存在なわけで。

 そういった限界オタク的スタンスは、ともすれば芸能人だとよってたかって来る人間たちとはまったく違う紳士的な振る舞いにも見えるわけで。
 やっぱり、取り繕う必要がない相手というか、猫を被らなくて済むのでね。
 何せ光助に対してだけではあるものの口ではいろいろと悪態をつく憂花さんは完全な姫にはなりきれない性分です。
 寄りかかる相手が欲しかっただけなのではないか、という自分の気持ちを受け入れられなくなることがありまして。
 その辺も、推せるポイントですね。


ということで。

 ぜひ。

 ……続刊リリース、待ってるよ。

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