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自由詩

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2022年5月の記事一覧

夜明け、化膿しかけた肩のうずきが、狭すぎるゴムのトンネルのようになってぼくをしめあげた。不快なしびれが、口のまわりに楕円形の輪をつくる。昨夜、何にあれほど驚かされたのか、もうよくは思い出せない。夢のなかの駈け足。時間が過熱し、燃えつきる。息もたえだえに、こよりの先にぶらさがってふるえている、赤い線香花火の燃えかすのようだと思う。すべての光景から、棘が抜け落ち、すべすべと丸っこく見える。ほら、猫が一

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東の干潟

東の干潟に存在する無数の三角錐や、それを見守るようにして配置された二十三の鳥居、それらを見下ろし南中をつづける瓜のような太陽は、いったい誰のために用意された墓標であったか。その答えを見つけることができぬまま、私は十七度目の春の夜を迎え、いつしか真昼の月の幻覚を見るに至った。真昼の月と真昼の太陽を見分けることができなくなったのは、果たしていつのことだったろうか。あの日、東の干潟に甲殻類の骨片を集めた

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