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いざ、野村屋本店

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さてさて、遂に栃木県へと着いた我々一行。周りには誘惑がいっぱい!目の前の看板は佐野ラーメン。少し行けば、味噌まんじゅう、いもフライなんてのもあって。目が追いつかない。なんなんだここは。未知の美味しそうな食べ物で囲まれているぞ。これじゃあ、耳うどんにたどり着く前に暴食の悪魔になってしまいそうだ。
朝は食べない派の自分だが流石にお腹が空いてきた。しかしながら今日は耳うどんを食べに来たのだ。ここで負ける訳にはいかない。
数々の誘惑を切り抜けてようやく辿り着いた野村屋本店。大きな看板があって見つけるのは容易であった。
店の横に駐車場があるのだが、お昼時ということで駐車場は満員御礼だった。しばし待機しながら耳うどんへの妄想が広がっていく。「モチモチしてるのかな?柔らかいかな?どんな汁なのかな?」お腹は空いていても耳うどんへの期待だけで待ち時間等苦にならなかった。

野村屋本店入口の写真

車を停めて店前へと向かう。昔ながらの味のある暖簾と佇まい。その風貌から長い間この佐野の土地で雨の日も風の日も暑い日も寒い日も一生懸命に切り盛りしてきた事が窺える。横には蕎麦を打つスペースもあって観覧出来そうであった。あいにく蕎麦打ちを見る事は叶わなかったがきっと見応えがあるのだろう。
順番が来て入店すると中もこれまた趣のある店内であった。座敷とテーブル席があってどちらも年季のある机でありながらも手入れは行き届いており、綺麗だった。やはり、昔ながらのお店は物の手入れも上手なのだなぁと思った。

メニューを見ると定番のそばやうどんから季節物の一品まで種類豊富に取り揃えられていた。お目当ての耳うどんも汁がいくつか種類があってどれにしようか悩んでしまう。おすすめで行くべきか、カレーもいいし、けんちん汁もいい。季節のすき焼き風もいいな。全て少しずつ食べたいくらいだ。
いくらか考えて、佐野名物セットにする事に。この佐野名物セットはゆずと椎茸の入った耳うどんとこれまた佐野の名物らしい大根そばを一度に味わえるというなんとも贅沢なセットである。
ふと壁を見ると数々の著名人のサインが所狭しと飾られていた。今日までたくさんの人が耳うどんを求めてここを訪れたのを示唆しているようだった。店員さん同士の声の掛け合いも盛んで今のお店には中々見受けられない活気がここにはあった。そして我々が注文してからの間も続々とお客さんは途切れずやってきていた。

注文してから10数分程。遂に耳うどんが我々の元にやってきた。

佐野名物セット(前)
佐野名物セット(フル)

蓋を開けるとそこはまさにお正月の風景が広がっていた。かまぼこに伊達巻といったお正月ならではの具材が入っていて、ナルトにカニカマまで入っている。その奥には刻んだ人参とネギ、そして柚子がキラキラと汁の中を優雅に泳いでいた。そこに特別感を増すかのように椎茸と出汁の和の香りが鼻の奥を刺激する。見ただけで美味しくて幸せな気分になる。
三が日に食べると言っていたからお正月感溢れる仕様なのかもしれない。
見た目を堪能した後、そっと箸を入れてお目当ての耳うどんを掬ってみる。

耳うどん

コレは!耳だ!
少しとんがり気味の耳たぶ、真ん中にギュッと集約された部分がより耳らしさを引き立てる。ゆっくりと一口。もにゅっとして肉厚な食感。今まで食べたうどんのどれとも違う。そしてクセになってまた一口、一口と食が進む。美味しい。汁もコクがあって濃厚で椎茸と柚子の風味が合わさってさっぱりと飲める。色々なメニューがある中でこれにして良かったと思わせてくれる味だ。
モグモグ食べながら今度は大根そばにシフトチェンジ。

大根そば(千切りの大根が乗っている)

大根おろしそばは食べた事があるが、千切りした大根で食べるのは初めてだ。コレもまた縁起担ぎがあるようで名物となっている。ツユに漬けて食べてみると大根のシャキッとした食感が良いアクセントになってさっぱりスッキリがクセになって美味しかった。

交互に美味しいを堪能しながらあっという間に食べ終える。結構量があるように感じたが美味し過ぎてペロッと食べれてしまった。
舌も満足、お腹も満足。幸せだ。

うどんとそばを個々で食べる事が多い中でこのデュエットを味わえたのはとても良い経験だった。お腹の中でうどんとそばが仲良くさのまる音頭を踊っているような気がした。

野村屋本店、とても良い店だった。
ごちそうさまでした。

満足して車に乗り込む。「美味しかったねぇ」なんて感動を共有しながら次の目的地に行く時、父がボソリ。
「……佐野ラーメンも食べれるかなぁ」

この後、父のつぶやきが実現し、無事麺のトライアングルを達成する事となる。

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