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【読書ノート】『踊り場の花子』(『ふちなしのかがみ』より)

『踊り場の花子』(『ふちなしのかがみ』より)
辻村深月著


ホラー小説の短編集。

「幽霊を見る人は、それを見るだけの理由を持つ。目の前にあるのは、あなたを映す鏡である。」

相川英樹が担当するクラスに青井さゆりが、いた。ちようど、小谷チサ子が、教育実習生できたいた時だ。青井さゆりは、いじめられていた。そして、いつも学校の階段をひとり黙々と掃除していたのだった。

さゆりのことをいつも見守っていたのが、花子だった。さゆりは花子のことを憧れの薮内さん(登校拒否中)だと思って、ミハイル・エンデの『モモ』を貸し出す。

ある日、山奥で、さゆりは死んでいた。自殺として、処理されるものの、身体には、数多くの痣とタバコを押し付けられた跡があった。

キーワードを挙げてみる。

①『モモ』 ミハイル、エンテ著
円形劇場の廃墟に住む少女モモを街の人々は、世話をする。実はモモには不思議な力があった。そして、街の人々の悩みを癒す。そこに、灰色の男たちという謎の集団が現れて、街の人々から時間というものを奪ってしまう。モモは奪われた時間を取り戻すために戦う。

②階段をくだる
退行や後退を意味し、進歩や成長の逆を表す。また、外部の世界から内なる自己へと向かうことを意味する。そして、無限性や終わりのない連続性を象徴する。

③「逢魔が時」
日本の古い言葉であり、一般的には「悪い運命や試練が襲いかかる時」という意味で使われる。また、個人や社会にとって大きな変革や転換期の到来を示す。そして、個人の内なる闘いや心の葛藤を指す。人間の内面には善と悪、欲望と理性などが相克し、葛藤が生じる。

④「誰そ彼」
個人が周囲の人々に対して興味や関心を持たず、無関心な態度をとることを指す。

物語の主題は何か?

幽霊を視る人は、何らかの理由がある。幽霊とは、通常は存在しないとされる存在なのだけど、それを目撃する人にとって、その存在は、自分の中に何かの原因があるということ。

鏡は、自分の姿を反映させる。幽霊を目にする人が見ているものは、幽霊ではなく、それは、自分の内面や心の状態なのだろう。
そうすると、幽霊というのは、単なる幻想や超自然の現象ではなく、目撃者自身の内面なのだということ。

自分が犯した罪は必ず、神様に裁かれるということだと理解した。

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