【読書ノート】『ピクニック』(『スモールワールズ』より)
『ピクニック』(『スモールワールズ』より)
一穂ミチ著
瑛里子には、父親がいない。生まれてしばらくして、父親は、交通事故で亡くなっていた。それでも、母・希和子は、献身的に瑛里子を育ててたお陰で、幸せな時間を過ごした末に、結婚・出産となって、娘・未希が生まれた。
未希は瑛里子にとって絶大な喜びであり、祖母の希和子も献身的に育児で疲れる瑛里子をサポートする。
ある日、希和子は、瑛里子に、単身赴任先の夫の元に行って、気分転換することを提案する。その間、希和子は、未希の面倒を見る。そうして、瑛里子が夫の元に出かけた翌日、未希は突然死する。
そして、希和子は、幼児虐待の容疑で逮捕される。
物語の語り手が、誰なのか明かされないまま、短編では、収まりきれないような、衝撃的な展開を迎える。
未希は何故死んだのか?
希和子が封印してしいた過去とは何か?
物語の主題は何か?
今の幸せというものは、奇跡の上で成り立っていると理解した。
私自身、いま、思えば、子どもが幼い頃は、常に危険と隣り合わせの状況だったことをしみじみ思い出す。
たまたま、階段から転がり落ちそうな1歳の息子に気付いて、何事にも至らなかったり、小学生になってからも、小さい子ども同士で戯れあって、講堂の舞台から落下したり、無事に大人になってくれたことに感謝な気持ちでいっぱいになる。
物語のラストは評価は分かれるだろうけど、恐怖を感じた。
短編なのに、涙あり、感動あり、恐怖ありと盛り沢山の物語だと思った。