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【読書ノート】『冬の夜』(『父と私の桜尾通り商店街』より)

『冬の夜』(『父と私の桜尾通り商店街』より)
今村夏子著


短編集で、全編通して、人生の不条理みたいなことが、テーマになっているのだけど、本編は、

赤ちゃんの幽霊が出る病院で同じ306号室に生まれた「かっちゃん」と「なみちゃん」という二人の赤ちゃん。なみちゃんの家族は幸せそうで暖かい一方、かっちゃんの家族は冷たい印象を受ける。かっちゃんは早産でトラブルがあるのに、世の荒波の中に連れて行かれる。一方、なみちゃんは家族の愛情に包まれ幸せに退院する予定だったが、黄疸が出て退院できなくなってしまうという話。

キーワードを挙げてみる。

①冬の夜
1. 外界の喧騒から離れた静けさを象徴する。この静寂は、自己を見つめ直す内省の時間を与え、人生の真実や自己の存在について考えさせられる。
2. 冬は自然の休眠の季節であり、生命の終焉を象徴すると同時に再生の準備でもある。この対比は、人生における終わりと新たな始まり、死と再生の循環を示す。
3.困難や試練を象徴しつつも、未来への希望と可能性を感じさせる時間でもある。
4. 冬は変化の象徴でもあり、自然のサイクルを通じて、すべてのものが常に変わり続けることを彷彿させる。

②タンス
1.中身は、外からは見えないため、隠された側面や秘められた感情を象徴する。

2. 中身は時間とともに変化する。これは、個人の成長や変化、または人生のサイクルを象徴する。

③椅子
1. 生活における安定や、心の安らぎを求める欲求を象徴する。

2.時間の流れを象徴する。特に古い椅子は、過去の記憶や歴史を内包しており、世代を超えたつながりを示唆する。

物語の主題は何か?

生と死は常に隣り合わせであり、終焉と再生の循環の中でひとは、生きているということなのだと理解した。

平家物語の冒頭
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。 猛き者も遂にはほろびぬ、 偏 ひとへ に風の前の塵におなじ。」を思い起こさせられた。

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