【読書ノート】『鬼ばばあ』(『つめたいよるに』より)
『鬼ばばあ』(『つめたいよるに』より)
江國香織著
小学生の時夫と近所の養老院に住む老婆トキとの交流の物語。
近所の子供たちは、養老院の老人たちに近づかないようにしていた。
若い女の血を吸っているとか、養老院に潜り込んだ子どもはハンバーグにされてしまうという噂がまかり通っていた。
ある日、時夫が、川沿いの土手で、父親とキャッチボールをしていると、養老院の老婆に声をかけられる。老婆は、名前をトキと言って、名前が似ていることから時夫に親しみを持ってくれたのだった。
時夫は、勇気を出して、老婆のトキさんを訪ねていく。
養老院の中では、老人たちの世界が、展開されている。それは、平和で、こころ安らぐ世界。
そんなトキ婆さんが、認知症になって、老人仲間から隔離された。
時夫が訪ねても、トキ婆さんは、時夫のことを忘れてしまう。
そして、トキさんは、亡くなっていく。
物語の主題は何か?
ひとの命というものは、有限で、出会いには、別れが必ずついて回る。儚いという想いもあるのだろうけど、出会って、交わることが、人生なのだと理解した。
短編だけど、なかなか、こころに刺さる物語だった。