見出し画像

【読書記録】『弟』(『すいかの匂い』より)

『弟』(『すいかの匂い』より)
江國香織著


姉が弟の葬儀に参列する物語。物語は、姉が火葬場から家に戻り、喪服を脱いで過去を回想するシーンから始まる。そして、幼い頃に弟と一緒に行った「葬儀ごっこ」を思い出す。

この「葬儀ごっこ」は、祖母の葬儀中に時間を持て余した姉と弟が始めた遊び。遺族役と故人役を交代しながら行う。

キーワードを挙げてみる。

①蛾
1. 蛾は成虫になるまでの過程で、幼虫(毛虫)から蛹を経て変態する。この過程は、自己の成長や変容、人生の過渡期を象徴する。また、自我の発展や精神的な成長のメタファーとして解釈される。

2. 蛾は光に引き寄せられる習性があり、光は知識や真理の象徴とされる。ここから、蛾は真理を求める人間の欲求や、知識への探求を象徴する。

3. 蛾はしばしば夜行性であり、暗闇や死を連想させる存在としても解釈される。しかし、死は再生や新たな始まりにつながるものでもあります。この観点から、蛾は死と再生のサイクルを象徴すると理解される。

4. 蛾の短い生涯や儚い存在は、無常や人生のはかなさを象徴する。

②お葬式
1. 死という現象を受け入れる儀式であり、生命の終焉を象徴する。同時に、死は新たな始まりや再生の象徴となる。

2. 故人を偲ぶだけでなく、残された人々が集まり、共に悲しみを分かち合う場でもある。死は人々を結びつける重要なイベントとも言える。

③煙
1. 煙は一時的で、すぐに消えてしまう存在。この特性は、物質的な世界の無常さや、人生の儚さを象徴する。存在するものはすべて変化し、消えていく運命にあることを示唆する。

2. 煙は空気中に漂い、形を持たないため、物質と非物質の境界を曖昧にする。これは、物質的な現実と精神的な存在との関連性を示唆する。この観点から、煙は物質と精神の交差点や、認識の不確かさを象徴する。

3. 煙は燃焼の結果として生じるものであり、物質が異なる形態に変わる過程を示す。この変容は、人生の過程や自己の変化を象徴する。

物語の主題は何か?

ひとは絶えず変化を続ける。そして、死を迎える。ただ、死は生の延長線上にあって、新たな生が生まれるということなのだと理解した。

いいなと思ったら応援しよう!