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【読書記録】『羊と鋼の森』
『羊と鋼の森』
宮下奈都著
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主人公・外村は、北海道の山間部で育った。高二の二学期に、学校の体育館で、ピアノの調律に立ち会う。そのことがきっかけで、高校卒業後、調律師の専門学校に進学するため、北海道を離れる。二年後、専門学校を卒業して再び、地元に戻って、楽器店に調律師として採用される。
キーワードを挙げてみる。
①音楽と天文学
両者の共通点は、宇宙の秩序や調和を表現する手段であるということ。
音楽は音の組み合わせによって感情や思想を表現する芸術であり、リズムやメロディーは自然界のリズムやサイクルと深く結びつく。音楽の音階や調和は、数学的な比率に基づいており、これは宇宙の構造に見られる法則と類似しているとされている。
一方、天文学は宇宙の構造や法則を探求する科学であり、星々や惑星の運行は規則的なパターンを持つ。この宇宙の秩序は、音楽のリズムやメロディーのように、調和を持っていると考えられている。プラトンは「音楽は天の調和を反映している」と述べ、宇宙の音楽的な側面を強調した。
②調律師
楽器の各音を正確に調整し、音の調和を追求する。この作業は、数学的な理論や物理的な原理に基づいていて、音の振動や周波数に対する深い理解が求められる。そして、演奏者や聴衆が求める音色や雰囲気を創り出すことが求められる。この点で、調律師は科学と芸術の架け橋となる存在といえる。
プラトンやピタゴラスの哲学において、宇宙は調和と比例の法則に従っており、調律師は、この宇宙的な調和を楽器に宿らせる役割を担い、音楽を通じて人間と宇宙、自然とのつながりを深める。したがって、調律師は音楽の調和を通じて、宇宙の秩序を反映しているともいえる。
物語の主題は何か?
ひとには、持って生まれた役割というか使命のようなものが必ずある。自分の役割に気づくきっかけは日常生活の何気ない出逢いのなかに、あったりする。
周りに左右されずに素直な気持ちで日々の生活を送ることが大切なことなのだと理解した。
爽やかで、未来に希望を持つことができるよい物語だなあと思った。
映画化もされているようなので、見てみたいと思った。