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「うつせみ」

「うつせみ」
樋口一葉著



漢字で書くと『空蝉』となる。いわゆるセミの抜け殻だ。

一言で言うと、主人公雪子は、由緒ある家の一人娘。彼女には、昔から気心知れた許嫁(いいなづけ)正雄がいた。ところが、植村という男性と出逢ってしまう。つい、許嫁がいるということを隠してしまっていた。植村は、雪子を深く恋慕っていくと、雪子に許嫁がいることを知って、自殺してしまう。
そして、雪子は、心を病んでしまったという話。

「うつせみ」とはどういうことか?
1. 無常性と変化の理解:すべてのものが絶えず変化していくことを受け入れ、物事の浮き沈みや喜びと苦しみを理解することが重要とされる。
2. 空しさと創造性:人間の喜びや成果が一時的であることを理解し、瞬間の美しさや現実の限界に目を向けることで、創造性や感受性を高めることができるとされる。
3. 生と死のつながり:死や終わりを否定するのではなく、生と死が相互に依存し合っていることを受け入れ、変化や転換を自然の摂理として捉えることが重要とされる。

空蝉は、古典文学や俳句などに登場する言葉であり、夏の季語とされている。例えば、松尾芭蕉の有名な句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」では、夏の静けさとセミの鳴き声が対比されている。また、源氏物語では、「空蝉」という巻名があり、その巻に登場する女性も「空蝉」と呼ばれている。この女性は、光源氏が恋した女性・紫式部の娘であり、母親に似て美しい容姿を持っていますが、光源氏に対して冷淡で、結局は死別してしまいまう。この女性の名前は、「空蝉」という言葉から連想されるように、光源氏にとってはかない存在であったことを示している。

本書の「うつせみ」は、源氏物語の「空蝉」が、漢字表記に対して、ひらがな表記になっていることも、何か、弱々しい儚さを象徴しているように思ったのだけど、どうだろう。

樋口一葉自身、短命だったのだけど、亡くなる14ヶ月の間の驚異的な
執筆活動と激しく恋して散っていったことを思うと、物語には、彼女の姿が投影されているような気がして、切なさを感じた。

スタンダールの最後の言葉
「生きた、書いた、恋した」そのままの人生だったのだろうなあと、妙に納得してしまった。

midnight talk 幾田りら

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