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『可愛い女』
『可愛い女』
チェーホフ著
美人で恋愛好きな主人公オーレンカが、その時々に出逢った人を、熱烈に愛して、彼らそれぞれの色に染まっていく。夫となる男達は、どういう訳だか、あっさり亡くなってしまう。その度に、抜け殻のようになってしまうオーレンカなのだけど、半年もしないうちに次の出逢いに夢中になっていくという非常に魅力的で可愛い女性の物語。トルストイは、オーレンカを、理想の女性だと称賛したらしい。
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昨日まで演劇好きだったのが、材木屋の奥さんになると、豹変して、演劇なんて知らない自分になってしまう。
オーレンカが、二度も死別を体験するのもなかなか辛いことだと思うのだけど、その都度、あらたの恋をして、蘇るというのもすごいことだと感心する。
オーレンカの非常に良いところは、ひととの出逢いに素直に喜んでいて、相手の良いところにどんどん気づいていくところではないか?
収入がいくらで、背丈はいくらで、出身大学はどこで、みたいな条件を当てはめていくのではなく、目の前に現れた人を好きになっていくその過程が、良いのだろうなあと思った。
私自身、仕事で転勤して、目の前に現れた女性と3ヶ月で、結婚した口だからね。
今時の女性は、経済的にも、精神的にも自立するのがあるべき姿とされているわけで、オーレンカみたいに男性がいないと生きていけないようでは、困る、時代遅れなお姫様話とも、とられてしまいそうなのだけどね。
なかなか、婚活アプリの出会いというものには、恐怖を感じてしまうのだけど、子供らは当たり前のように使用しているみたいで、聞くのも恐ろしいので、放っている。
自分のことはわかっているようでいて、実は、わかっていないものなのだと思う。自分というのは、パートナーを通してはじめてわかるのではないだろうか?オーレンカはパートナーが、変わるたびに、別の自分を発見していったのだと思う。
知人にも、恋多き女性が、いたことを思い出した。よく次から次へと新しい恋人が現れるものだと感心する。そして、恋に敗れると私に連絡がくる。私は最後の砦だからという理由で付き合うことはなかったのだけど。
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