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みんな迷子 | 『迷子のコピーライター/日下慶太 著』を読んで
電通のコピーライターであり、写真家であり、セルフ祭顧問でもある。加えて、UFOを呼ぶバンド「エンバーン」のリーダーかつ、2児の父、大阪府民。
ヒッチャカメッチャカな肩書きは、多才だからか。それとも迷い続けた人生だからか。
波乱万丈と、ありきたりなひと言ではくくれない、著者の人生を物語としてまとめられたこの本。
「やりたいことに正直に、欲張りに」
それでもいいと、等身大で教えてくれた気がした。
◇◇◇
一途。一筋。ひたむき。
プロの考え方には、ひとつの道を極める美学がはびこっていると思う。そして、脇道にそれることは不真面目として糾弾される。さも、サボっているようにとらえられる。
そんな風潮から、100%を費やせない自分が許せなくなっている人は、多いと思う。
著者の人生は失敗と挫折、寄り道の連続だった。
ネタバレになるので、直接的な内容の記載は避けるが、カメラマンになる夢を諦め、ロシアで軍人に捕まり、思うような成果が出ない新人時代。
ようやく、結果が出始めたと思えば病気になり、コピーライターとしてのスター街道を離れる。
しかし、先人たちが歩んできたコピーライターとしての王道をそれたことで、悟る。自分にしかできないことがあると。
よく聞くアドバイス。「若いうちにたくさん経験して、たくさん失敗しなさい」。
手垢のついたこの言葉を聞く度に思うことがある。
「失敗したくて、失敗するヤツなんかいないよ」と。
若くても、初めてでも、成功したい。そう思っている人が大半だと思う。そんな人に、成功者が「失敗してもいい」と言われたとて、安全圏からの言葉でしかない。
著者も、コピーライターとして成功しているひとりだろう。少なくとも「本を出しましょう」と声がかかる人であることは紛れもない事実だ。
だが、それにしては人生が泥臭い。活動があまりにもアンダーグラウンドだ。華やかなニオイがなにひとつ感じられない。(褒め言葉)
そんな人の言葉だから刺さるものがあった。納得感と信頼感があった。
本書のあとがきにこんな一節がある。
今は金を稼いでへん。でも、人を稼いでるんや。
ボランティアで商店街のイベントに関わることになった際、大阪・新世界市場会長からもらった言葉として紹介されていた。
仕事以外にも、生活はある。大切な趣味や、人間関係がある。
たとえお金にならずとも、そこで生まれたつながりは、いつかなにかの形となって活きるときが来る。それが仕事であっても、そうじゃなくても。
なんだか回りくどくなってしまったが、「好きなことをやろう。それは無駄にならないから」と言われてる気がした。
ちょっと根を詰めすぎてるかも。
そう感じている人にとっては、きっと僕と同じように刺さるなにかが、この本にはあるはずだ。
迷わない人生なんてない。
大切なのは、”迷い"と取るか、"未来の糧"と取るか。
実行するのは、はためたに難しいが、そんなポジティブをくれた本だった。