退行性変性(加齢変化) ー重力下に生きるヒトという種の共通事項ー
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地球に生存するにあたり、ヒトという種は重力環境下にさらされることになります。
しかし、ヒトの身体は進化の過程です。
四足動物から直立二足歩行に適応しきっているかというとまだまだ弱点だらけです。
これが加齢に伴う身体の変化、つまり"退行性変性"に大きく関わります。
病態発症メカニズムや症状を捉えていく際に考えなければいけない内容です。
退行性変性(加齢)のパターン
整形外科クリニックに勤務していると、待合室にたくさんの御高齢な患者さんが座っています。
その方々の座位姿勢を見ただけで、どこが痛い方か分かるでしょうか?
医師でも理学療法士でも、おそらく難しいです。
なぜならば、皆が同じような姿勢をとっているからです。
加齢に伴う身体の変化を"退行性変性"と言いますが、この変性にはパターンがあります。
年齢を重ねるにつれ、脊柱が反っていく人はいないと言っていいでしょう。
膝もどんどん伸びていったり、過伸展していく人はいません。
肩が挙がりやすくなる方もいません。
更には、勝手に筋肉が増えていくことや、関節が動きやすくなることもありません。
退行性変性がない前提の成人を対象として捉えた場合、ヒトの身体には運動方向の優位性があります。
これは、宇宙空間で無重力環境下になったヒトの身体について調べた研究から考えていくと整理できます。
これは、いわゆる解剖学的関節の中間位ではなく、無重力環境下に晒されることにより関節周りの筋活動が無くなった際に、関節周りの全ての組織の張力が均等になることで生じる関節肢位となります。
この関節肢位をベースに身体を考えていくと、重力環境下に晒されることにより、無重力での関節肢位の中でも、筋による姿勢保持を必要とする部分がより顕著に重力に準じた方向に向かって姿勢変化していくものと思われます。
そのような姿勢に加え、更に筋力低下や関節可動域制限が付随することで、動作制限が伴っていくものと考えられます。
退行性変性と病態
これまでの内容をまとめると、ヒトは進化の過程にあり、変性は一定のパターンを示します。
つまり、ヒトがヒトという種として重力環境で生存する中で、"なるべくしてなる変性の共通事項がある"ということになります。
その上で病態が生じることを考えていくと、共通事項として生じた変性が起こっていく前提の中に、より詳細な身体運動の傾向性、運動課題、運動環境といった個別的な要素が加わることにより、特定の部位に特定の病態をもたらすものと考えられます。
理学療法士としては、退行性変性に抗うように治療することも必要ですし、抗っても変性していく可能性を踏まえ、変性が進んでも症状や機能低下が生じない身体作りを考えていくことも重要だと思います。