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ランテルナ ディ ジェノバ

今でも、暇さえあればネットで美味しい店のチェックを欠かさないのですが、その日も昼に中崎町界隈を散策した結果、昔ながらの趣きのある街並みにかわいいカフェや雑貨屋さん、美容院や小料理屋が新旧程よく集積しているのを発見し、この中に隠された名店があるに違いないと、夜ネット検索を試みたのでした。Googleでレストラン検索をし、点数の高いものについて口コミと料理の写真をチェックしてスクリーニングした上で、食べログとRettyで確認するというのがルーティンなのですが、そのプロセスを経て辿り着いたレストランの一つがランテルナ ディ ジェノバでした。

しかしすぐに難関が立ちはだかります。ネットでは予約ができず、電話でのみ予約受け付けとの記載が。そして実際に20:00頃お店に電話をしてみると、今は料理等で忙しいのでもう少し時間を置いてからかけ直してもらえませんか、と男性の声。確かにこれまで自分はお店への配慮が足りなかったと反省し、改めて21:30頃電話をしたところ、今度は年配の外国人と思しき女性が出て、またもやもう少し後に電話をして下さい、と言いかけました。絶望に打ちひしがれようとしていた矢先に、先程の男性の「あ、さっき電話のあったお客さんかも?」とのフォローの声が奥から聞こえて、ようやく予約を取り次いでもらえた次第。

今どきこんなに取っつきにくい店は久しぶり、というのが正直な感想でした。しかし、そんな中にも何か人の気を引く雰囲気があって、困難にもめげずに結果的に予約まで漕ぎつけたのだと思います。実際に店に伺ってみると、電話を取り次いだ女性は年配ではなく、まだ30前後のイタリア人でオーナーシェフだということがわかり、二度びっくり。電話を取り次いでくれた男性はスーシェフと思われ、他に給仕の若い男性がきびきびと愛想よく応対しており、良い意味で想像を裏切られました。店は枝道を更に横に折れた奥に、岬の端っこで大海原を照らす小さな灯台のように佇んでいます。古い木造の家屋をそのまま生かす形で改築したのか、天井や梁、カウンターが人に良く馴染んだ木製の板組みで、温かい家庭に招かれたような穏やかな気持ちにさせられます。


店の定番のスパゲティジェノベーゼ

しかし何と言ってもこの店の目玉は女性シェフが振舞うジェノバの家庭料理です。日本流にアレンジされ、洗練されたイタリア料理店は数多くあると思うのですが、この店はイタリアで脈々と続く家庭の味が根底に感じられるのが最大の魅力です。日本の新鮮な海や山の幸から調味料に至るまで国境の壁を取り外してどん欲にレシピに取り入れているのですが、その底流に何故かジェノバの景色やそこに住む人々、そしてその人々の誇りが感じられるのです。そんな魅力の虜になり、その日以来、次の予約を取って店を後にするということを重ねて来ました。全く僭越ながら、毎月この若きイタリア人シェフの進化をチェックし、そして翻っての我が身の一か月の成長も確かめたい、との思いもあった気がします。

そしてついに大阪生活におけるこの店での最後の晩餐を迎えました。カレンダーで数えてみると、2023年1月28日(土)の最初の訪問から16回目の訪問でした。この約一年半、店の定番であるスパゲティージェノベーゼとそら豆のムースを毎回食し、一方で季節折々の食材を取り入れた意欲的でありながら懐かしい品々を、シェフが地元から取り寄せた自慢のイタリアワインと共に楽しんできました。私はこの店への定期訪問をベースに自分の大阪での歩みを確かめ、そして小さいながらも次の一歩を踏み出してきた気がします。

この女性オーナーシェフは正直なところ、まだ自分の店の切り盛りに精一杯という趣きですが、その一生懸命さ、そしてそれを支える周りのスタッフ(実はスーシェフは旦那さんです)とのアンサンブルによって店全体には心地の良い若さ、そして勢いを感じます。これから先、大阪に来て、この店に立ち寄ることはなかなかできないかもしれないのですが、いつかまた、この店の成長ならびにそれと対比した自分の歩みを確かるために必ずや再訪したいと考えております。今後ともよろしくお願いします。

ランテルナ ディ ジェノバ
http://lalanterna.web.fc2.com/menu.html

店を出た少し先に門出を祝うかのような白い花が


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