【本の要約】『問題解決のジレンマ:イグノランスマネジメント:無知の力』
ロッシーです。
『問題解決のジレンマ:イグノランスマネジメント:無知の力』(著者:細谷功)という本を読みました。
本の冒頭に、「経営学の父」であるピーター・ドラッカーと、「哲学の父」であるアリストテレスが行きついた先は、同じ「無知」だったという記載があります。
もしも「無知こそが、新しい知を生み出すための最大のキーワードになる」と言われたら、「なんで?」と思いますよね。
でも、もはや知識量ではコンピュータに誰もかなわない時代です。そして、AIの発達により、この傾向はさらに強まるでしょう。
そのような時代では、無知に着目することが必要不可欠になっていくでしょう。
それでは以下、要約していきます。
1.「知らないことすら知らない」=「未知の未知」という死角
問題①「コンビニで売っているものを列挙せよ」
問題②「コンビニで売っていないものを列挙せよ」
これら2つの問題には「異なる思考回路」が求められる。コンビニで売っていないものの世界は、実は限りなく広がっている。要するに、売っていないもののほうが、荒唐無稽なものまで含めて「なんでもあり」である。(例:洗濯機、犬、電気、平安時代の空気、愛、タイムマシン、不老不死の薬、助動詞…etc.)
A:自分が知っていると知っているもの ⇒ 「既知の既知」
B:次に、知らないと知っているもの ⇒ 「既知の未知」
C:それに加え、知らないことすら知らないもの ⇒ 「未知の未知」
AとBはいわゆる「常識」であり、普通はこれが「世界のすべてだと思ってしまう」。しかし、Cの領域のほうが、AとBの領域よりも天文学的な差があるほど大きい。(検索キーワードすら思い浮かばない)
2.知(識)とは何か?
知ることは、「分ける」こと。そして、「分ける」とは、「線を引く」こと。
人間は「線を引く」ことで事象を認知し、言語や数式に変化することができる。例えば、虹が七色に見えるのは、本来は連続的に変化する色をあるレベルで区切って「線を引いて」いるから。
個々の事実を線を引いて分類し、関係づけたものの集合体が「知」であり、それを静的に固定したいわば「スナップショット」が「知識」である。
「知識」の解釈をバラバラにして、分類と関係づけを再度やり直す(再構成する)ことが「考える」行為。
既存の解釈が「固着」したままの状態を、「思考停止」という。
3.問題発見と問題解決
「問題発見」とは:「未知の未知」の領域から問題を見つけ出すこと。見つけ出された問題は、「既知の未知」の領域になる。
「問題解決」とは:「既知の未知」の領域にある問題を解決すること。解決された問題は、「既知の既知」の領域になる。
問題発見は、「問い自体から探すこと」であり、問題解決は、「すでに問いが出ていることへの回答を探すこと」である。
昔の日本の自動車や電機業界での勝ちパターンは、「問題解決」の分野であったが、もはやこれらの分野は新興国の領域になっている。現代のビジネス界で目を向けるべき領域は圧倒的に「問題発見」にシフトしている。そのためには、「何を知らないか」(無知の知)に目を向けることが必要となる。
4.無知の活用法
「無知の知」とは:自らの無知を「メタ」のレベルで、つまり自分自身を上から見る視点で眺めて認識すること。
無知の知がなければ、すべての思考回路は起動しない。
無知で既存知識をリセットする。知識を大量に有した専門家視点に対しての「素人視点」をもつこと。問題発見に必要なのは、知識をリセットして無知の境地で素直に物事を見ることができるかどうかが鍵になる。知識と偏見とはコインの両面である。
アンラーニングができるか。創造するためには、いったん「線を引いた」ものを「引き直す」必要がある。つまり「一度引かれた線を白紙に戻して考える」ことを意味する。
ドラッカーは「問いを立てる」、つまり問題発見の重要性を強調しており、そのために「無知である」ことが活きる。
5.問題解決のジレンマ
「問題」とは、事実と解釈との乖離から生じる。
時間の経過により、事実が変化しているのにもかかわらず、解釈はいったん固定されるとなかなか変わらないため、乖離が生じて問題が発生する。
例えば、環境(事実)が変化しているのに、古い法律・ルールや、会社の組織割りなど(解釈)がそのままになっているケースなどが挙げられる。いったん引かれた線は、それが陳腐化して機能しなくなっているものでもなかなか変わらない。
いったん引かれた線にいつまでも固執して守りに入るのが世の中の大多数だとすれば、そこに「歪み」を見つけて「新しく線を引く」ことができるのが「イノベーター」である。
「問題発見」と「問題解決」のそれぞれに必要なスキルや価値観は180度異なるため、問題解決ができる人は、問題発見ができないという構造的なジレンマが存在する。
問題発見ができるイノベーターの思考回路と、問題解決に求められる思考回路の違い。(例:携帯電話の開発)
6.「特異点」からの問題発見法
問題発見はどのようにして行えばいいのか。着目すべきは「特異点」である。
特異点とは、常識に反するような新しい事象のこと。世の中が変化するときには、「特異点」が現れ、それが成長していき、それが「主流」になっていくという変化をたどることが多いため、そのような事象はイノベーションのネタが満載である。
特異点の見つけ方として、「禁止」に着目することが挙げられる。新しいニーズは往々にして既存の仕組みからは否定的に捉えられ、それが「禁止」という形となって現れるため。
例えばファミリーレストランで「勉強禁止」という案内を見かけることがあるが、禁止という言葉からは、必ず二つのニーズを嗅ぎ取ることができる。一つ目は「禁止したい側のニーズ」で、もう一つが「禁止されている側のニーズ」である。
7.問題発見を促す思考法
問題発見をするには、上位概念で考えることが必要。上位概念とは「メタ」で考えること。つまり対象を一つ上のレベルから見ることである。
「イマ(時間軸)・ココ(空間軸)・コレ(具体⇔抽象軸)」の視点から、時間軸、空間軸、具体⇔抽象軸を広げてみるのがメタの視点である。
「メタ認知」ができていない例
・「足を引っ張っている人」は足を引っ張っていることを自覚していない
・何かを「理解していない」人は理解していないことに気づいていない
・「話のわかりにくい人」は「何がわかりにくい」のかを理解していない
8.Why(上位目的)で次元を上げる
上位概念で考えるための手法として、Whyが重要。
5W2Hの疑問詞のうち、「Why?」だけが、上位概念を用いて土俵を変えることができるきっかけとなりうる。
Whyという疑問詞は非常に便利であり、「未来」に向ければ目的を表し、「過去」に向ければ原因になるという「時系列の二つの関係性」を同時に表現できるため、問題発見には必須の問いかけといえる。
「なぜを5回繰り返せ」という言葉があるが、「なぜ?」だけが5回繰り返すことができる。
上流(川上)の仕事はWhyを使い、下流(川下)の仕事はHowを使う。
最後に
以上です。
このほかにも、「アリの思考」vs. 「キリギリスの思考」など、非常に興味深い内容もあったのですが、なにぶんボリュームが多すぎるので、かなりざっくりとした要約となっています。興味がある方はぜひ実際に読んでみてください。
私たちは、ネットのおかげで、簡単に知識を得ることができるようになりました。
でも、知識を増やせば増やすほど、私達は本当に賢くなったのでしょうか?もしかすると、それらの知識にとらわれて、逆に思考の重荷になってしまっている可能性はないのでしょうか?
そんなことを考えさせられました。
最後に、この言葉を紹介して終わりたいと思います。
Thank you for reading !