松村北斗さんの所作の美しさーー『カムカムエヴリバディ』の稔さんーー
ここ最近、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』を観ることが最大の楽しみだ。
三世代のヒロインのトップバッター安子を演じるのは上白石萌音さん。ミュージカル映画『舞妓はレディ』の時から、演じて歌って踊れるすごい新人が出てきたなあ、と注目しているうちに、あれよあれよとスターダムを駆け上がっていった。安子役も、安定の演技。それでいて初々しい清らかな女性像がちゃんと感じられるから、やはりただものではない。とにかく全体が丸くて小さくて柔らかく、しっかりした芯がある。透明感のある声も心地いい。
萌音さんとともに、今世間の注目を一斉に集めているのが、SixTONESの松村北斗さんの演技だ。私はもともとSixTONESが好きで、「ジャポニカスタイル」を初め彼らの楽曲とパフォーマンスは常にチェックしている。同時に、『パーフェクトワールド』の義足の青年晴人役などを観て、俳優としての松村北斗さんにも注目してきた一人だ。けれども、今回の朝ドラの演技については、「稔役の人って、ジャニーズなの?」といった声があちらこちらから上がり、これまでSixTONESやジャニーズとは無縁だった層の注目をも集めている。俳優松村北斗がついに日本中で発見された、そんな印象だ。
稔役では、詰襟の学生服姿がよく似合い、色白の肌の質感や塩顔の端正な顔立ちが、薄幸の美青年らしさを醸し出す。そして、丁寧に感情を乗せた一つひとつのセリフと真っ直ぐな眼差しなどの表情が一体となって、稔という青年の清潔できっぱりとした性格が見事に表現されている。
中でも私が感心するのは、稔の所作の美しさである。戦前の日本人に対する個人的なイメージではあるが、全般に姿勢が良くて所作が美しかったのではないかと思っている。特に、稔のように育ちのいい御曹司で大学生であれば尚更だ。
具体的には、正座してお辞儀をするシーンでの背筋の伸び方や、手の位置、肘を曲げる角度などが、まるでサムライのようだ。
また、お箸を持ったり置いたりする手の所作の美しさにも驚いた。茶道の点前のように折り目正しく、かつ流れるようにスムーズなのだ。
こういった姿勢の良さや所作の美しさが、稔のパーソナリティをより美しいものとして印象付けている。生まれ育った家庭環境によるものなのか、空手をやっていたという経歴から来るものなのか、あるいはアイドルとしてジャニーズで鍛え上げられたものなのか、そこは定かでないけれども、これらが松村北斗という俳優の資質の一部であり、強みであることは間違いないだろう。加えて滑舌の明瞭さにより、セリフが非常に聞き取りやすい点も特筆しておきたい。
今回の朝ドラではもうすぐ彼の姿を見ることができなくなりそうだが、いつの日か、近い将来、時代劇で活躍する彼を観たいと切望している。
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