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【ショートショート】 青空のカケラ

繰り返される、異常気象により
地球は随分と、様変わりをした。

大気汚染により、外に出る時は酸素マスクを付け
紫外線の量は、エグいほど増えたため
肌の露出は、禁止された。

自然の彩りは、ところどころ人工的になり
空もまた、例外ではなかった。
もはや青空は消え、空と言えばグレーが当たり前に
なっていた。

その日私は、月に一度開かれる『懐古市場』に
出かけた。
そこには、普通では手に入らない懐かしい物や
不思議な物が、売られていた。

店「そこのお客さん、ちょっと ちょっと」

手招きをしながら、ヒゲの怪しげなおやじが
いそいそと近づいてきて言った。

店「大きい声じゃ言えませんがね、良い物が
  手に入ったんですよ・・・見ます?」

私「あ、じゃあ・・・はい」

店「実は、とても貴重な『青空のカケラ』が
  手に入りましてね、今なら高濃度酸素付きです」

私「えっ!あの『青空のカケラ』ですか

店「そうです。宝物として持っていられますし
  今なら高濃度の酸素がついていてお得です」

青空は貴重だから、これは買おう。
そういえば最近、寝る時にやけに息苦しさを感じる
酸素不足が、原因か?
それなら、高濃度の酸素も欲しい。

私「買います『青空のカケラ』」

店「そうですか、ありがとうございます。
  それでは、またのお越しを・・・」

怪しいヒゲのおやじは、ニヤッとすると
どこかへ歩いて、行ってしまった。

私「えっ?あの、青空のカケラ・・・」

私は異様な暑さと、息苦しさを感じて
ハッと目を開けると、どうやら自分の部屋で
寝ていたらしかった。

汗だくの私の首と腹には、猫のレミとシドが
乗っかっていて、息苦しさの犯人はあっけなく
特定された。
窓を見ると、いつもの見慣れた青空が広がっていて
なぜだか私は、ホッとした。

私はリアルで奇妙な夢を、見ていたらしい。



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