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【ショートショート】 博士からの手紙

家に帰ると、知らない博士から
手紙が届いていた。
宛名の所に、赤い文字で『読んではいけない』と
書かれてある。

しかし、僕宛の手紙だ。
僕は、いささかの躊躇もなく、封を開けてしまった。

開けてしまったんだね。
赤文字で、忠告したのに。
読んではいけないと、書かれてあったら
読みたくなるのが、人間の心情というものだ。
まあ、私としては嬉しい限りだが。
きみ、手紙は読まなくてもいいよ。
直接、脳に話すから。
私の研究はね、宇宙と一体化することなんだ。
自分が思うだけで、瞬間移動ができる。
すごくないか?

フフフ・・・驚くのも無理はない。
ああ、きみが思っていることも全部わかるんだよ。
きみの疑問にも、即座に答えようじゃないか。
私は今、きみの後ろにいる。
ハハ・・・振り向いたって、私の姿はないよ。
けれども、私は存在しているんだ。
ほら、自分の体をみてごらん。
少しずつ、消えていってるだろう
まずは足、次に胴体、そして手、最後に頭だ。
そーだよね、怖いね。
わかるよ、でもね忠告を無視して
封をあけたのは、きみだから、
しかたがないよ。
私は宇宙と一体化できた。
研究は、成功したんだ。
ただねぇ、宇宙は真っ暗で寂しいんだよ。
だから、仲間がほしくてね。
えっ?何できみが選ばれたか?
波長かな、人生どうでもいいやの波長。
そう、思ってたでしょ、いつも。
だったらその人生、私が貰っても・・と思ったワケ。
それから最後に、元に戻る方法なんてないから。
アレ?ってことは、この研究も失敗なのかもしれない。

部屋に僕の姿は、あろう筈がない。
見知らぬ博士と、宇宙を漂っているのだから。




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