【TreePlanting.2】存在感の調節。
前回記事【TreePlanting.1】の続きです。
前回は「町」「産業」についての授業みたい感じでしたが、本日からちゃんと、「表現」「制作」っていう話になってきますので。笑
ちょっと長めですが、深めです。
心のご準備まで、よろしくお願いしますw
ピアノの「彼」。
ベルリン・札幌を拠点に活動する作曲家兼ピアノパフォーマー「福田ハジメ」。
彼の行動力は凄まじく。
例えば「アップルパイを買いに行こう」って言ってお店が閉まってたときは、「煙突から煙出てるってことは、今作ってるんだよ」って言って、アポなしで突入交渉して見事ゲットしたし、
「ランチは14時まで」っていうお店に13:30に電話をかけ、「まもなく着きます。14時には食べ終わるので、今から作っといてください」と言い放った。。
そして、この「下川町」でも、その行動力を遺憾無く発揮されました。
本人写真。
彼と僕は下川町には来たものの、特にアポやコネがあったわけでもなく、しかも到着したのが18時前だったので、役場もやっていないという状況。
ま、普通に考えて、「今日のところは打つ手なしだな」と思っていた僕ですが、
「あれ?観光協会、閉まってるけど、電気ついてるね」
と、建物の窓の明かりに気づき、その場で電話をかけはじめたのでした。
数分後。
「やっぱりまだ職員残ってた。OKもらったから行こう!」
電話を終えた彼は、当たり前のように建物に入っていくのでした。
…すげーな、いつも何もないところに道を作っていきやがるw
演奏場所を求めて。
迎え入れてくれたのは、観光協会の会長。
と言っても、僕よりも若いのは一見してわかる。30代半ばくらいかな?
僕らは尋ねます。
下川で、ピアノ演奏をさせてもらえる場所をお聞きしたくて。
アポなし突撃の時間外訪問ですから、用件は手短に。
僕らとしては、「じゃあ、ココとかイイんじゃないですか」って案内を提示してくれるものと、当然思っていました。
町の観光協会、ですし。
しかし、ちょっとの沈黙の後、
「…どんな音楽をされるんですか?」
と、質問してこられた。
…お、結構細かく丁寧にナビゲートしてくれるタイプなのかな?
主に現代音楽、即興演奏を得意としてパフォーマンスをしています
という僕らの説明を聞きながら、観光協会長はパソコンでおもむろにハジメさんのホームページを開きはじめました。
そして、こちらの返答が終わるや否や、パソコンでハジメさんの楽曲を再生。
…なるほど、こういう音楽なんですね
触りを聞きながら、「これはどんな時に弾いたもの?」とか質問を重ねてくる。
…なんだか、面接されてるみたいだ。
そして、ひと通り聞き終えると、
演奏できる場所ですが、
…今度の「下川のイベント」に出演していただく、というのは如何でしょう?
という提案をされてきたのでした。
デキル男の手腕。
予想外の展開に、僕らはちょっと驚きます。
でも、観光協会長は淡々と説明を進めていきます。
プランとしては、こうです。
今度の下川町のイベントに、ピアノ演奏で出演していただく。
その際には、「ただ演奏する」ということではなく「下川だからこそ」という表現の演奏をしていただきたい、というのが条件です。
その条件で出ていただけるのであれば、もちろん出演料はお支払いします。
で、ここからは提案なんですが、
「下川を表現する曲」を作っていただいて、それをイベントで演奏していただく。
ただ、急遽のことなので、楽曲の制作料として予算をご用意することができない。
その代わり、これを下川のプロモーションも兼ねてプロジェクトに組み込むので、
・下川に滞在していただいて「楽曲を制作」していただき、
・その「制作風景」を動画に撮らせていただいて、
・下川町としても公式のものとして「プロモーション」していく
そこにかかる経費は町で負担し、必要な手配は全てこちらで組む、
というのは如何でしょう?
…ぅおっ!
一瞬で、すごいものが色々出されてきた!
・下川のイベントに出演、演奏
・下川のイメージで楽曲を制作する
・下川に滞在し、プロモーション映像を撮影する
整理すると、こんな感じ。
観光協会長は、「交換した名刺」「交わした会話」「再生した楽曲のクオリティ」から、物凄い速さで脳内コンピューターを稼働させていたようです。超高性能。「ハジメさんのピアノ」という表の部分だけでなく、「裏から支える僕」という存在がいることも含めて視野に入れ、展開をシミュレーションして、提案してきた。
そう、彼こそが、前回記事で書いた
元・六本木ヒルズのプロジェクトマネージャー
だったんです。どおりで、敏腕なわけだ。
顕在化してない、最先端。
「下川町」に関わるようになって、気づいたことがあります。
感度が高い人ほど、この町の存在を知っていて、ここを目指している
まだ表面化される前の、表立って話題になるよりもさらに一歩早い段階の話です。
例えば北海道では今、「ニセコ」や「東川町」が新しいとピックアップされるところですが、「下川」はその先を見る人たちが目をつけている町だったんですね。
まだ形に出てきてはいないが、これからクるだろう、次の町として。
実際、下川町はSDGsで賞を受賞するほど評価され、下川町長はアメリカ・ポートランドで講演をしています。町中には、ドイツからの技術やデザインが取り込まれた、高い意識とセンスを感じさせる施設が設置されてきている。。
外からだとなかなか見えないけど、随所に覗くポテンシャルがすごい。
観光協会長も「その感度」でこの町にやってきた人でした。
ヒルズではできなかった、フロアや部署よりもっと大きな「まち」を動かしたいと。
…やっぱ、感度も意識もレベルも高い。。。w
ちなみに、その観光協会長を引っ張ってきたのは、下川町長ご本人だそう。。
町長からして只者ではないのか…!
***
結局、というか当然、僕らはその提案にのり、お話を受けることにしました。
だって、こっちにとってデメリットがない、断る理由がない。
ただ、
求められるものの、レベルは高い。
…いいじゃねーか、燃えるぜ!
そして、ここで僕は思います。
…「下川」に「新しい人」が集まってる理由は、きっとこの人だ。
僕らと同じように、他の人にもこれをやってるとしたら、人が入ってくる理由がよくわかる。
そして僕らが今、ロックオンされたわけだ。
「町」を「音」で表現するということ。
僕らに課せられた課題。
「町」を表現する「音」って、「景色がきれい」だとか「特産物がこれだから」とか、そういうことを歌ってくれって求められているんじゃない。
や、そういう「キャンペーンソング」みたいのもあるんだろうけど、少なくとも今ここで求められているのは、そういうものじゃなく。
先人が木を植えて森を育ててきた目に見えないスピリットだとか、
そこから紡がれてきた未来を見据える意識だとか、
町を包み込む空気、温度、空の鋭さ、枝葉の密度とか細かい一つ一つまでを汲み取って、それを「音楽」として表現するということ。
ものすごく感覚的で、抽象的で、
絶対的な正解もなく、それでいて精度を求められるような、
難易度の高い表現。
きっとそれを表現しないと、この町を表現したことにはならない。
だから僕らにわざわざ滞在期間を設けられたし、その間できる限りの体験ができるようプログラムを組まれたのでした。
できる施しはすべてやってあげたよ。さぁ、表現して!
って、逃げ道も言い訳も許さないくらいのプレッシャー笑
…って、こうやって裏話まで書いてからだと、かなりの「ドキュメンタリー」に見えるかと思いますが、動画の目的は「プロモーション」です笑
ということで、制作過程の「ドキュメンタリー」…もとい「プロモーション」動画です笑
これを見ていただくと、長々書いてきたことが一見できると思います。
僕的に、インタビューの内容がなかなかに「深い」と思うので、特に「表現者」の方には是非見ていただきたいなと思うのです。
僕もちょこっと映り込んでますw
僕らはなんとか「下川滞在」をこなしきり、楽曲は完成。
そして、今度はこれをCD作品にまとめることになったのでした。
つづく。
読んでいただき、ありがとうございました!
スキ・ご感想等もいただけますと嬉しいです*
最後までお読みいただき、ありがとうございました!頑張って書き重ねていきますので、是非またお越しください。