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リーダーの条件はフォロワーがいること

[要旨]

ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんによれば、リーダーとは、管理職という地位に就くことで自動的になれるわけではなく、その人が持つ実力、人間力、権威によって決まるものであることから、真のリーダーになるためには、内面的な魅力を高めるようにしなければならないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんのご著書、「伝説のプロ経営者が教える30歳からのリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、新さんによれば、会社経営者の中には、ついつい、慢心してしまい、自分をエライ人間だと思い込んでしまう人もいますが、その結果、その思い込みが倣慢にまで増幅してしまうと、業績に悪い影響を与えることになるので、それを防ぐには、第三者の批評に謙虚に積極的に耳を傾けることを心がけなければならないということについて説明しました。

これに続いて、新さんは、リーダーは会社ではなく、部下が決めるものであるということについて述べておられます。「リーダーとはリードする人、人を導く人である。人を導くには、後ろから喜んでついて来るフォロワーがいなければリードできない。振り返ると誰もいない、そこにはただ風が吹いているだけではリーダーとはいえない。リーダーになるための一丁目一番地は、フォロワーがいるということである。人を導くといっても、人が渋々ついて来るようでは、本当のリーダーではない。

リーダーの後について来るフォロワーは、ただのフォロワーではなく、喜んでついて来る、“Willing Follower”(ウィリング・フォロワー)である。ウィリング・フォロワーとは、『あの人のためなら……』、『あの人がそう言うのなら……』と、リーダーの持つ実力や実績、人間力、人格に感じて、心から信頼し、心服してついて来る人のことをいう。つまり、リーダーとは、地位や肩書といった『権力』というハードパワーで決まるのではなく、その人が持つ実力、人間力、その人の持つ『権威』というソフトパワーによって決まるものである。

権威には、『あたりの塵(ちり)を払うような厳(おごそ)かさ』はあるが、明文化されるような資格や条件はない。人の実力や人間力がリーダーたり得るかの評価は、フォロワー次第ということになる。したがって、管理職という地位に就いたからといって、自動的に本物のリーダーになれるわけではない。フォロワーが認めて初めてリーダーという名に値するのだ。私の初めての部下も、私をリーダーと認めるまでには、4~5か月を要した」(28ページ)

新さんの、「リーダーは、その人が持つ実力、人間力、その人の持つ『権威』というソフトパワーによって決まるものである」というご指摘は、いわゆる「権威受容説」と考えられます。権威受容説とは、組織論の大家であるバーナードが、主著、「経営者の役割」の中で述べています。バーナードによれば、「権威とは、公式組織における伝達(命令)の性格であって、それによって、組織の貢献者、ないし、『構成員』が、伝達を、自己の貢献する行為を支配するものとして、すなわち、組織に関してその人がなすこと、あるいは、なすべからざることを支配し、あるいは決定するものとして、受容する」(同書170ページ)ものです。

もう少し説明を加えると、バーナードは、権威が受容される条件として、「(1)伝達を理解でき、また、実際に理解すること、(2)意思決定に当たり、伝達が組織目的と矛盾しないと信じること、(3)意思決定に当たり、伝達が自己の個人的利害と両立しうると信ずること、(4)その人は精神的にも肉体的にも伝達に従いうること」(同書173ページ)を挙げ、これらが同時に満足されているときに権威が受容されると述べています。

ここまでの説明は理屈っぽくなったのですが、経営者や幹部がどれだけ立派な肩書をもっても、部下がそれを理解したり、受け入れたり、納得したりしなければ、上司の「権威」を認める余地がないということはご理解いただけると思います。とはいえ、起業家の方の中には、「社長」という肩書を手に入れるために会社を設立したものの、事業活動を始めたら、自分だけが懸命に働いても、振り返ると、部下がついて来ないという状態になっている会社も少なくありません。

これは、バーナードのいう条件のうち、(3)の部下の利害に一致すると感じられなかったり、(4)の部下が上司の指示に従うことができると感じられないことなどが要因だと思います。従って、経営者の方は、自分だけが目標に向かって活動すればよいということではなく、経営者の指示に従うことは自分にとってもメリットがあると理解できるよう促したり、指示通りに活動することは難しくなく容易に実践できると感じられるようになるまで能力を高めたりする役割があります。

もちろん、そうなるためには、リーダーが人間的に好かれるようになることは、言及するまでもありません。ただ、部下に好かれるようになるというのは、経営者にとって最も難しい課題なのかもしれません。新さんも、「私の初めての部下も、私をリーダーと認めるまでには、4~5か月を要した」と述べておられます。そして、これは、私自身も最も欠けている資質であると感じているので、引き続き、精進しなければならないと考えています。

2024/10/12 No.2859

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